「田辺くん。田辺さん。はると君。はると。どれがいい?」
 唐突だった。しかも、授業真っ最中。
本当に頭のねじ外れてる。......心の中で言ったつもりだった。
「うわ~最低だ。きみは心のねじがはずれてるね。」
我ながらいいこと言ってやったと言わんばかりの笑顔。とりあえず、質問に答えてやろうと思ったところで
「おい小原、バカはクラスに1人でいい。仲間を増やそうとするな。」
先生の言葉にまた笑顔が溢れる。当の本人はちゃうちゃうと必死に抗議し私は天才やしと言い自爆していた。

とりあいず、質問に答えてやろうと休み時間、彼女を見るとぼんやり空を眺めていた。
「おい。」
なに?と半分、上の空な返事が返ってきた。
「どれでもいい。お前が好きなので呼べ。」
一瞬戸惑った顔をしたが、大口を開けて笑い出した。
「あはははは、何のことかと思った。本当にまじめだね。」
なんだか馬鹿にされた気がした俺は
「まじめじゃねえ。だがお前よりはまじめだ。」
皮肉を込め言ったにもかかわらず、彼女はまた大きな口を開けて笑っていた。
 その時俺は彼女はひまわりみたいだと思った。

「数学はようできるのにね。他がね…。塾入らないかんね。」
はぁとため息が出そうなところを抑えて、しぶしぶうなずく。
「約束やけんね。そういやな顔しない。」
なんで今回のテストで15位以内に入らなければ塾に入るという約束を母親としてしまったのだろう。過去の自分の感情が不思議で仕方ない。
「どこの塾に行くかは任せるよ。ただし安めにしてね。」
語尾にハートマークがつくような言い方が鼻につくがヘイヘイと軽い返事をしてその場を後にした。