君はっていうのは名前のことだろう。

「凜…」

 私は一言だけ呟く。すると海は、

「凜、ここに居ることを許してくれてありがとう」

 その言葉を聞いて、少し申し訳なくなった。

 別に私だって勝手に居座っているわけだし、どこにいようが許可をとる必要なんてないだろうし。

 それでも海はありがとうと言ってくれた。人に感謝されるのなんていつぶりだっけ。

 たった一言なのに、それが無性に嬉しくて仕方がなかった。

 それからは、二人とも無言の時間が続いたけど、なぜか息苦しいとは感じなかった。

 むしろ心地良いぐらい。

 あの日から海は展望台にくるようになった。