言っても無慈悲になるだけだ。その辺はとっくに割り切っている。

 荷物を置いて、出かける準備をする。

 外へ出ると住宅街の裏路地を進む。誰も知らないであろうこの道は、先程の街の喧噪とは違って、驚くほど静かだ。

 路地を抜けると、途端にひらいた空間が見えてくる。

 そこにぽつんと佇む一つの建物。とてもシンプルな展望台だった。

 私は毎日のようにここにくる。ここは安心して一人になれる、唯一の場所だったから。

 けれどその日は珍しく先客がいた。誰だろうと思って覗いてみると、そこに居たのは一人の男の子だった。

 床に座って本を読んでいる。集中しているのかこちらには全く気付かない。どうしようかと頭を悩ませていると、

「あっ、」

男の子と目が合う。