いつか消えてしまう恋だと分かっていた。
それでも僕は、君が好きだった。
月の光に照らされて、微笑んでいる君が。
あの日君と見た月を、僕は一生忘れない。
毎日同じような日々を繰り返している。
ある時から、僕はそう感じるようになった。
- ピピピッピピピッ
目覚ましが鳴り響く。
そして、今日もまた代わり映えのしない世界がはじまる。
自分の部屋を出て一階に降りるが、いつも通り誰もいない。
僕は母親と二人暮らし。
父親が出て行ったため、母親は朝早くから
夜遅くまで働いている。
最初は上手く出来なかった家事も、毎日やっているからかいつの間にかできるようになっていた。
今日も一人分の朝食を作り、食べたら学校
へ向かう。
「行ってきます。」
誰もいないのにそう呟く。
今日は四月八日。
つい昨日高校二年生になったばかりの十六歳だ。
学校へ向かう途中に美しく咲き誇る桜の木から、はらはらと散る花びらを眺めていると、昨日あったある不思議な出来事を思い出した。
四月七日。
今日は始業式だ。
季節の移り変わりは早く、ついこの間高校生になったばかりだと思っていたのに、もう高校二年生になる。
僕は毎日通る道にある桜の木を眺めるのが好きだ。
あの場所に行くと自然と立ち止まってしまう。
そして今日も、桜の木の前で学校へと向かう足を止める。はずだった。
しかし今日僕が目を奪われたのは、桜の木からはらはらと散る花びらを眺めながら微笑んでいる女の人だった。
僕と同じ制服を着ているから学校が同じなのだろうけど、見覚えがなかったため下級生か上級生かなと思った。
気がつけば吸い寄せられるように彼女の方へ歩いていた。
そんな僕に気づいた彼女が僕の方を見て微笑みながら、
「綺麗ですね。」
そう言った。
急に話しかけられたため、咄嗟に出た言葉は、「そうですね。」だけだった。
少しそっけなかったかなと不安になったが、彼女は気にする様子もなくまた薄く微笑んだ。
その笑みにほっとしていると、「私と制服一緒だから同じ高校ですよね。
私転校してきたばかりだから不安で、もしよかったら一緒に登校しても良いですか。」
「はい。」
僕は何も考えずそう答えていた。
「ありがとうございます。私の名前は澪川月、高校二年生です。あなたの名前は?」
「橘想空、高二です。」
そう返すと、
「よかった。じゃあ同級生だね。」
と嬉しそうに笑った。その笑顔につられて、僕の口角も自然と上がっていた。
「じゃあ、行きましょうか。」
「あっはい。」
歩き始める月の隣に並んで、僕も歩き出す。
それでも僕は、君が好きだった。
月の光に照らされて、微笑んでいる君が。
あの日君と見た月を、僕は一生忘れない。
毎日同じような日々を繰り返している。
ある時から、僕はそう感じるようになった。
- ピピピッピピピッ
目覚ましが鳴り響く。
そして、今日もまた代わり映えのしない世界がはじまる。
自分の部屋を出て一階に降りるが、いつも通り誰もいない。
僕は母親と二人暮らし。
父親が出て行ったため、母親は朝早くから
夜遅くまで働いている。
最初は上手く出来なかった家事も、毎日やっているからかいつの間にかできるようになっていた。
今日も一人分の朝食を作り、食べたら学校
へ向かう。
「行ってきます。」
誰もいないのにそう呟く。
今日は四月八日。
つい昨日高校二年生になったばかりの十六歳だ。
学校へ向かう途中に美しく咲き誇る桜の木から、はらはらと散る花びらを眺めていると、昨日あったある不思議な出来事を思い出した。
四月七日。
今日は始業式だ。
季節の移り変わりは早く、ついこの間高校生になったばかりだと思っていたのに、もう高校二年生になる。
僕は毎日通る道にある桜の木を眺めるのが好きだ。
あの場所に行くと自然と立ち止まってしまう。
そして今日も、桜の木の前で学校へと向かう足を止める。はずだった。
しかし今日僕が目を奪われたのは、桜の木からはらはらと散る花びらを眺めながら微笑んでいる女の人だった。
僕と同じ制服を着ているから学校が同じなのだろうけど、見覚えがなかったため下級生か上級生かなと思った。
気がつけば吸い寄せられるように彼女の方へ歩いていた。
そんな僕に気づいた彼女が僕の方を見て微笑みながら、
「綺麗ですね。」
そう言った。
急に話しかけられたため、咄嗟に出た言葉は、「そうですね。」だけだった。
少しそっけなかったかなと不安になったが、彼女は気にする様子もなくまた薄く微笑んだ。
その笑みにほっとしていると、「私と制服一緒だから同じ高校ですよね。
私転校してきたばかりだから不安で、もしよかったら一緒に登校しても良いですか。」
「はい。」
僕は何も考えずそう答えていた。
「ありがとうございます。私の名前は澪川月、高校二年生です。あなたの名前は?」
「橘想空、高二です。」
そう返すと、
「よかった。じゃあ同級生だね。」
と嬉しそうに笑った。その笑顔につられて、僕の口角も自然と上がっていた。
「じゃあ、行きましょうか。」
「あっはい。」
歩き始める月の隣に並んで、僕も歩き出す。