……たっか!

 オレは果実園リーベルのウェブサイトに載っている、たくさんのパフェの値段を見て、思わず心の中で叫んだ。

 渡辺がそんな金があったら、リーベルのパフェが食べたいと言っていたのも頷ける。

 軽く、一カ月分の小遣いが消し飛ぶレベル。さすがフルーツ専門店のパフェ。ファミレスなんかのパフェで使われている、果物と質が違うのだろう。

 さらに季節限定パフェは値段が載ってない……時価ってやつ? 怖っ!

 オレはファミレスのパフェも充分美味いと思うし、スーパーなんかで手頃に買える果物でも、普通に美味いと思う舌の持ち主だ。

 昔テレビで観たブドウが、一房で恐ろしい値段だったことを思い出した。

「はあ……」

 ――金がない。先立つものがない。

 ……でも。

 念願の果実園リーベルの新作パフェを、美味そうに食べる渡辺の表情を想像してみる。きっと、幸せそうな笑顔をしてくれるんじゃないだろうか?

 見てみたい。――出来れば目の前で。

 小遣い前借りって手もあるけど……。

 それって、すげーダサくない? 結局、親から貰った金だし。でも誘っておいて、奢れもしないのもすごくカッコ悪い。

「どーすっかな……」

 だけど、もう一度幸せそうに微笑む彼女をどうしても見たい。

 なんか、金にもの言わせて若い子に入れ上げる、オッサンの気持ちがちょっと分かるな。

 金の力で相手の笑顔を買うようで、不純かもしれないけど、相手の喜ぶ顔が見たいという点は、オッサンたちだって本当なんじゃないだろうか?

 それに自分の稼いだ金で、相手を喜ばせてる分、オレなんかよりまだマシな気がする。

「バイト……すっかな」

 オレは流れるように、バイト検索アプリをダウンロードしていた。


つづく