ハードカバーの表紙を開くと、一ページ目の中表紙には、黒と白、二匹の猫の絵が描かれていた。

 ……。

 この「絵」どこかで……。

 オレがその絵のことを思い出そうと、じいっと絵を見つめていると、その絵が一瞬歪んだように見えた。

 ……ん?

 オレは慌てて目を擦る。

 いや、そんなわけない。
 オレ、疲れてるんだな、きっと。

 絵が歪むなんて……そう平常心を取り戻しかけたとき、白猫の方が中表紙の中で、グニャーっと動いたのだ。

 気のせいじゃない! 本当に動いた!

 オレはその奇怪な現象に、思わず飛び退きそうになった。

 さらにその絵の白猫は驚いたことに、ポワッと中表紙から浮き出て来たのだ。

 昔、小さなころ、「飛び出す絵本」なんかを夢中で読んだことはあったが、そんな次元の話ではない。

 いや、オレが知らないだけで、昨今の飛び出す本の仕組は、こんな立体画像が飛び出すのが当たり前なのかもしれないと、そのときのオレは、無理にでも納得するしかなかった。

 飛び出して来た白猫の絵は、次第に立体になって行き、まるで本物の猫そのものになったのだ。

 白い毛並みだってフサッとしているし、触れば柔らかそうだ。長い尻尾もクネクネと動いている。

 オレは呼吸をするのも忘れ、目の前の信じ難い事象を、ただただ眺めていた。

 次の瞬間、その白猫の瞳がくわっと見開いた。

 その圧に気圧されて、オレは座っていた椅子共々、反射的に後ろにひっくり返ってしまった。

「おめでとうございます。アナタはこの本に選ばれました。ワタクシ『願い叶え製作委員会』のキャロルと申します。以後お見知りおきを……って、聞いてます?」

 そう言いながら白猫は、床にしたたかに腰を打ちつけて座り込んでいるオレを、机の上から訝しげに覗き込んで来た。


つづく