私はこの問いに対し、当然彼女のことが思い浮かんだ。
 どんなに想っていたって、彼女が同じ想いで返してくれることは、絶対ないだろう。

 彼女と先輩の、仲良く二人並んだ後ろ姿が脳裏をよぎり、胸が締め付けられた。

 ――どうしようもない。どうしよもないんだ。

 でも、お似合いだ。私が横に並ぶよりずっと。

 そう思い込もうとすると、さらに私の心は押し潰されそうになった。

 苦しい……痛い……つらい……。

 でも、分かってる――。それは彼女が望んだこと。彼女の一番の幸せなんだ。

 彼女の幸せを祈るべき。

 友人なら、大切なら、愛してるなら――

 きっと、そうするべきなのだ。

 ……。
 
 ……。
 

 切なさから来る想いが、その言葉を口に出させた。

「……諦める」

 諦めの言葉を吐いた途端、頭の中で、あの青年の声が聞こえた。
 
「……そうか。その選択肢を選ぶ君なら、まだあの世界で、充分にやっていけるよ。願い叶えの本は、君には必要ない」
 
 ……え?
 
 そしてその声を聞いた瞬間、気が遠くなっていった。
 
***
 
「渡辺さん、渡辺さん!」
「え?」
「なに、ボーっと突っ立っているんだよ? そんなところに立ってられたら、邪魔だって!」
「え……あ……ごめんなさい!」

 私は学校の図書室の入口を、ぼーっと立ち尽くし、塞いでいたようだ。
 
 あれ……? 私なんでこんなところで、突っ立っているんだろう?
 
 あれ……今まで私……なにしてたっけ?
 
 なにも……なにも思い出せない……。
 

 それなのに、心にぽっかり穴が開いたような虚しさが吹き抜ける。

 なんだろう? この気持ちは?

 なんなんだろう、この虚無感は――


つづく