【九月十五日(月曜日)】
 
 休み明けの月曜日、学校へ行ったら私の下駄箱のロッカーに、赤い洋封筒に入った一通の手紙が入れられていた。

 まだこれがラブレターなら、私の人生は救われたのかもしれない。

 だが現実は、そうはうまく行かないものだ。
 いや、現実の厳しさの方がマシだったかもしれない。
 
 ――赤い便せんの手紙には、こう記されていた。

『ワタナベ アスナ様
 本日、“アナタノ場所”でお待ちしております。
 願い叶えの本製作委員会より』


 ……なにこれ?

 “願い叶えの本製作委員会”って、なによ?

 最近ずっと、本のウワサについて調べ回っていたので、誰かがふざけて私のロッカーにこんなものを入れたのだろう。

 でも、“アナタノ場所”とはなんだろうか?
 
 ――思い当たらない。

 もし私がこの手紙を信じて、一喜一憂している姿を楽しみたいなら、その場所をちゃんと特定しておくべきではないか?

 そうでなければ、先回りもできない。
 
***
 
 なんとも奇妙で、不思議で、馬鹿馬鹿しい手紙ではあるが、私はまんまと、その手紙に夢中になっていた。

 一日中頭に浮かぶのは、手紙のことばかり。

 “アナタノ場所”……やはり、学校内のどこかだろうか?

 “アナタノ場所”なんていうキーワードは、今までのウワサ話の中に出てこなかったはずだ。

 そして結局私は、“アナタノ場所”の謎について、解くことができなかった。


つづく