【九月十三日(土曜日)】
 
『願い叶えの本における噂の考察』

 
 ●ケース1、『女子トイレのウワサ』

 ある女子生徒が、四階の女子トイレで本を見つける。女子トイレを出たところで、意中の男子生徒と衝突。女子生徒は転倒した際、右膝を負傷。その男子生徒に保健室へ運ばれる。(お姫様だっこだったとのこと)
 それをきっかけに二人は、付き合うことになったらしい。
 

 ●ケース2、『プールのウワサ』

 ある男子生徒が、学校のプールで本を見つける。
 水泳部に、美人でスタイル抜群の女生徒がいた。生徒内でも人気があり、当事者の男子生徒もその女生徒のファンの一人だった。
 ある日プールで事故があり、カナヅチだった、当事者の男子生徒は溺れかけたが、その時、その水泳部の美人の先輩に助けられ、それをきっかけに、二人は付き合うことになったらしい。

 ●ケース3、『演劇部のウワサ』

 ある女子生徒が、演劇部部室で本を見つける。
 その女子生徒は、文化祭の演劇上演をきっかけに、芸能界へスカウトされる。
 芸能界へ進出後、人気のアイドルと恋に落ちる。フォーカスされたが、カミングアウトし、二人は今でも幸せにやっているらしい。
 
 ……。

 呆れを通り越して、腹が立ってきた。

 この後も視聴覚室のウワサ、音楽室のウワサ、文芸部室のウワサ……と続くのだが、もううんざりで語る気になれない。

 なんなの、このご都合主義的展開。どこぞの少女漫画のようだ。いや、昨今の少女漫画の展開の方がまだマシだろう。

 百花のアホ話に、勝るとも劣らない。
 
 願いは“恋愛ごと”に限られているのか?

 はっ……! なんて、ロマンチックなアイテムだこと……!
 
 ……私は一週間、なにをやっていたんだろう?

 本のウワサ調べなんかに、躍起になって。
 私ほど、人生を無駄に生きている人間もいないだろう。
 どうしてこんな本で、自分が救われるなどと思っていたんだろう?

 自分が惨めで、情けなくて、涙も出なかった。
 なんのやる気も起こらなく、すべてのことが億劫で死んでしまいたかった。

 そう、そこで私の滑稽で異常ともいえる“本探し”は、終るはずだったのだ。


つづく