【九月八日(月曜日)】
 
 私は休み明けから、本の探索を本格的に開始した。
 
***
 
 相葉君は、本のウワサ話を同じクラスの石田奈美から、聞いたと言っていた。
 相葉君同様、ほとんど話したこともない相手だったが、傍から見ている分には大変なウワサ好きのようだ。

 なにか、貴重な情報を持っているかもしれない。
 
 そういえば、相葉君は石田奈美と親しいのだろうか?
 席は確か、相葉君の隣だったはずだ。
 これは使えるかもしれない。

***
 
 私は体育の時間を狙って、相葉君の話題をカモに、石田奈美と話すきっかけを作り、本のウワサへと話題を移していった。

 彼女は呆れるくらい喋るは喋る、まるでマシンガンだ。
 言葉に詰まらない人間は、頭の回転が早いからだそうだが、石田奈美も一見軽いノリの人間に見えて、頭のいい女なのかもしれない。
 
***
 
 彼女が示したキーワードは“女子トイレ”だった。

 女子トイレで、本を見つけたというウワサがあるらしいのだ。
 トイレの花子さんが、持っているとでも言うのだろうか?

 なんだか、怪談みたいなノリになってきた。

 ただどの女子トイレかは分からず、私は学校内の女子トイレを、片っ端から調べることになった。

 このときばかりは、自分が女で良かったと心底思った。


つづく