その日はなんだか、罰当番をサボるのも面倒で、オレの足は自然に図書室に向かっていた。
まるで前の日の写し取りのように、渡辺明日奈は図書室の窓の外を眺めていた。
「渡辺」
「ああ……今日は早いじゃないの」
渡辺はオレに向き直ると、薄く笑った。
「古い本を棚から、下ろすの手伝って欲しかったんだけど、今日は他にも人手があるから。ちょっとお使い頼まれて欲しいのよ。それ済んだら、今日はもう帰っていいわ」
渡辺はこっちこっちと、オレを手招きした。
***
お使いというのは、古書を欲しい委員会や、部活団体に譲り渡すというもので、オレは文化部活塔を担当することになった。
***
オレは、部活塔に来たことなどなかったので、いちいち入り口の地図を確認しながら、部室を訪ねなければならなかった。
意外に量が多かったのが、演劇部と写真部とJRC部。
JRC部に関しては、その存在すら知らなかった。
本を渡すついでに、どんな活動をしているのか聞いてみたが、“JRC”はジュニア・レッド・クロスの略で、要はボランティア活動を行う部活らしい。
JRC部の部長さんは熱っぽく語りだし、危うく勧誘されそうになったので、オレは慌てて逃げだした。
***
日も傾き掛けて来た。
文化部活塔を、オレンジ色の光が包んで行く。
オレは古書分配リストを見て、思わず息を呑んだ。
後……一箇所、残っている。
文芸部だった。
地図によると文芸部は、部活塔の隅にあった。
オレは文芸部に向かう途中、四時間目に梅野が言っていたことを思い出した。
“それって、文芸部が広めたデマだって聞いたけど?”
JRC部以上に、注意が必要な団体かもしれない……。
つづく
まるで前の日の写し取りのように、渡辺明日奈は図書室の窓の外を眺めていた。
「渡辺」
「ああ……今日は早いじゃないの」
渡辺はオレに向き直ると、薄く笑った。
「古い本を棚から、下ろすの手伝って欲しかったんだけど、今日は他にも人手があるから。ちょっとお使い頼まれて欲しいのよ。それ済んだら、今日はもう帰っていいわ」
渡辺はこっちこっちと、オレを手招きした。
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お使いというのは、古書を欲しい委員会や、部活団体に譲り渡すというもので、オレは文化部活塔を担当することになった。
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オレは、部活塔に来たことなどなかったので、いちいち入り口の地図を確認しながら、部室を訪ねなければならなかった。
意外に量が多かったのが、演劇部と写真部とJRC部。
JRC部に関しては、その存在すら知らなかった。
本を渡すついでに、どんな活動をしているのか聞いてみたが、“JRC”はジュニア・レッド・クロスの略で、要はボランティア活動を行う部活らしい。
JRC部の部長さんは熱っぽく語りだし、危うく勧誘されそうになったので、オレは慌てて逃げだした。
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日も傾き掛けて来た。
文化部活塔を、オレンジ色の光が包んで行く。
オレは古書分配リストを見て、思わず息を呑んだ。
後……一箇所、残っている。
文芸部だった。
地図によると文芸部は、部活塔の隅にあった。
オレは文芸部に向かう途中、四時間目に梅野が言っていたことを思い出した。
“それって、文芸部が広めたデマだって聞いたけど?”
JRC部以上に、注意が必要な団体かもしれない……。
つづく