四時間目が終ってすぐに、オレは昼食確保のために、購買部にダッシュした。理科室は購買部から遠いのだ。
が、その頑張りが裏目に出て、廊下の突き当たりで、英語の久保田ババアと衝突してしまった。
そのまま廊下でこってり絞られた。こんなことをしている場合じゃないのに!
早くしないとオレの昼食が、他の誰かのものになってしまう!
***
購買部に着いたころには、案の定、目当ての弁当も調理パンも菓子パンも、なにも残っておらず、空腹がさらにオレを追い詰めた。
――絶望だ。
分けてくれる、気前のいい男友達が思い浮かばない。
やつらが、昼飯を買いっぱぐれたオレを、あざ笑う様子がありありと目に浮かぶ。
クラスの女は……聞く気になれなかった。
女どもはメシを食うとき、こぞってつるんでる。
あの輪に、話しかける勇気などない。
そんな勇気があったら、今年の夏休みには脱童貞だっただろう。
せめて飲み物で腹を膨らまそうと、オレは自動販売機に小銭を入れた。
――なににしよう?
やっぱりここは、腹の膨れそうな炭酸か? いやせめて、固形物の入ったコーンポタージュ?
待て待て。血糖値を上げるために、甘い飲み物がいいかもしれない。
しかし、眠気もある……ここはやはり、カフェインたっぷりのブラックコーヒーか? あ、でもカフェインの含有量って、紅茶の方が多いって聞いたことがある……
「早くしてくれない?」
最近よく聞く声だった。
「……渡辺!」
「飲み物一つで……優柔不断ね」
……むっ。
渡辺、おまえはオレの気持ちを逆撫でる天才だよ。
「うるせーよ。ちょっと待ってろ!」
オレは自販機も見ずに、ボタンを押してしまった。
出て来たのは、イチゴミルクだった。
そんなの男子も飲むのね、はいどいて! と、どうでもよさげに渡辺は、自販機に小銭を入れた。ごろんと爽健美茶が出て来たと同時に、オレの腹の音が鳴った。
渡辺は、ぎょっとこちらに振り向いた。
その顔が、踏みつぶされたカエルのようで、少し可笑しかった。
つづく
が、その頑張りが裏目に出て、廊下の突き当たりで、英語の久保田ババアと衝突してしまった。
そのまま廊下でこってり絞られた。こんなことをしている場合じゃないのに!
早くしないとオレの昼食が、他の誰かのものになってしまう!
***
購買部に着いたころには、案の定、目当ての弁当も調理パンも菓子パンも、なにも残っておらず、空腹がさらにオレを追い詰めた。
――絶望だ。
分けてくれる、気前のいい男友達が思い浮かばない。
やつらが、昼飯を買いっぱぐれたオレを、あざ笑う様子がありありと目に浮かぶ。
クラスの女は……聞く気になれなかった。
女どもはメシを食うとき、こぞってつるんでる。
あの輪に、話しかける勇気などない。
そんな勇気があったら、今年の夏休みには脱童貞だっただろう。
せめて飲み物で腹を膨らまそうと、オレは自動販売機に小銭を入れた。
――なににしよう?
やっぱりここは、腹の膨れそうな炭酸か? いやせめて、固形物の入ったコーンポタージュ?
待て待て。血糖値を上げるために、甘い飲み物がいいかもしれない。
しかし、眠気もある……ここはやはり、カフェインたっぷりのブラックコーヒーか? あ、でもカフェインの含有量って、紅茶の方が多いって聞いたことがある……
「早くしてくれない?」
最近よく聞く声だった。
「……渡辺!」
「飲み物一つで……優柔不断ね」
……むっ。
渡辺、おまえはオレの気持ちを逆撫でる天才だよ。
「うるせーよ。ちょっと待ってろ!」
オレは自販機も見ずに、ボタンを押してしまった。
出て来たのは、イチゴミルクだった。
そんなの男子も飲むのね、はいどいて! と、どうでもよさげに渡辺は、自販機に小銭を入れた。ごろんと爽健美茶が出て来たと同時に、オレの腹の音が鳴った。
渡辺は、ぎょっとこちらに振り向いた。
その顔が、踏みつぶされたカエルのようで、少し可笑しかった。
つづく