とぼけているのかこいつはって思ったけど、どう頑張っても、その目を丸くしている様子からそんな気配は微塵(みじん)も感じない。

呆気(あっけ)に取られていると、ミコは再び空を眺め始めた。私はとろんとしてきたミコの目に映るように、無理矢理スマホの画面を視界にねじ込む。


「ほら、これだって」

「知ってるよ。この学校の子って、みんな持ってるよね」

「スマホじゃなくて……!」


まじか。

仲間意識が高い女子は、大抵自分も同じものを持っていたり同じことをしていると、すぐに共感しようとする。

でもミコはずっと他人事みたいというか、興味すら持とうとしない。もしかしてこの子、本当に持っていないんじゃ……。


「さっきシャッターの音が聞こえたけど、それってカメラなの?ちっちゃいのに、すごいね」


うげっ。いや待って待って、ありえないって。今時そんな子いる?


「ミコって……どこから来たの?」

「うーん、内緒」

「じゃあ、どうして転校してきたの?」

「今は言えない、かな」


声はふんわりとしているくせに、(かたくな)に答えようとしない。そうだ、この子は意外と頑固だった。

たしか、転校初日の自己紹介の時、ミコは自分の名前を言って軽く頭を下げただけでそれで終わらせようとしていた。

あの時カヨちゃんが好きな芸能人は誰なのかって訊いていたのに、ミコは今みたいに眉尻(まゆじり)を下げて申し訳なさそうにダンマリを決め込んだ。

その時教室の空気が一瞬で変わっていたのは、今でもはっきりと覚えている。

どうしても言いたくないという子に対して執拗(しつよう)詮索(せんさく)するほど私は()ちぶれてはいない。

ただ、わからないことがあると、妄想で情報を補填(ほてん)しようとする癖がある。

だからちょっとだけ思ったことを、気まずくなった空気を吹き飛ばす意味も込めて訊いてみる。


「わかった……!ミコは過去からタイムスリップしてきたんだ!」

「ふふっ。そうです、私は遠いところからからはるばるこの地ににやって来たのです」

「え……」