4時間目の現代社会。うだるような暑さと闘いながら、今日も必死に板書された文字をノートに書き写す。

教室では落ち着きのない山田とカヨちゃんがいつものように列を跨いで話している。2人に挟まれている須藤君は最近机に突っ伏す機会が増えているように思う。

気の弱い須藤君のことだから、もしかしたらこのまま不登校になってしまうんじゃないのかと心配になった。

もちろんクラス委員として何かしてあげられればって思うけれど、今は夏休み明けの実力テストに集中したいからごめんね。

佐竹先生がうるさい2人を一喝すると、一時的だけど教室はしんと静まりハンディ扇風機が情けなく風を切る音だけが鳴り響く。

その微妙な騒音だけの空間が私には心地良かった。

佐竹先生は質問に答えると”加点”を付け、反対に騒いだり、スマホを触ったりすると”減点”を付けると言っていた。

どうやら先生ってのは、小テストや定期テストだけでなく、授業態度も全部数値化して、私たちを否応(いやおう)無く縦一列に並べようとするのが仕事らしい。

何でも点数にされるの癪に触る(しゃくにさわる)けど、考え方によってはわかりやすくて都合が良い。だってプラス評価されることだけをすれば良いんだから。

そんなことにも気が付かない奴らは机に突っ伏したり膝下でスマホをいじったりしてるけど知らん知らん、私は知らん。助けてやんないから。

いるんだ、急に可愛い声してノートを写させて欲しいって頼む奴が。ほんとむかつく。

でもそんな奴らが(すが)ってきたら、断ると後から面倒だから仕方なく借りを作っておく。あいつらは返そうともしないけど。

勘違いして私に陰から敵意を向ける人間には、あえて私の方からにこにこしながら声をかけてやる。すると大抵ばつが悪そうな表情をしてどこかに逃げていく。そんで私は心の中で勝ち誇ったようにハンって鼻から息を吐くんだ。

勝ち組とか負け組とか、優等生とか劣等生とか。正直、疲れる。

けれどわかりやすい区分けがされてしまう以上、私は私自身の為に先が尖った階層の頂点を目指すしかない。

私の身体は、いつの間にかそんなことばかり気にする体質になっていた。

だって、強く生きるって決めたから。

大丈夫、間違っていない。

間違っていないよね。お母さん。