「こんなに景色が良いのに、どうして自殺の名所だなんて物騒なところになったんだろう」

「昔は何もかも忘れて飛び込みたくなるくらい美しい場所って意味だったらしい。でも、戦時中に爆弾が落とされて地形が変わって、それを見て嘆いた人たちが崖から身を投げるようになって、そこから日本でも有数の自殺の名所として広まったみたいだよ」

「そんなことがあったんだ」

「でも、それはもうずっと昔の話。最近はSNS映えする場所としてSNSで有名になって、今は観光に来る人が増えているんだ」

「須藤君って、物知りなんだね」

「た、たまたまだよ。部活で撮影に行く時は撮影場所の下調べもしなきゃいけないから」

「写真部なんだ」

「須藤君、ミコに写真の撮り方教えてあげたら?」

「え、や、教えられるほど上手くはないし……」

「わ!ちょっと、ミコ、危ないって!落ちちゃったらどうすんのさ」

「大丈夫だよ。あの崖のところにある花、綺麗だよ」

「もう!ミコを1人にしているとホント心配。入院先の病院でも変なことしちゃ駄目だからね」

「大丈夫だよ。ちゃんと連絡するから」

「今まで散々無視されたから、信じられないなあ。ね、須藤君」

「え、えっと、連絡はきちんとした方が良い、と思う」

「はーい。手術も連絡も、頑張りまーす」

「き、気負わなくても良いよ。十分頑張ってるよ、鈴木さんは」

「須藤君、急に格好良い事言って、どうしたの?」

「べ、別に。茶化さないでくれる?」

「ふふっ……!2人がいると頼もしいですな。頑張れそう。あ、そうだ。私まだ須藤君の連絡先聞いてなかったね。良かったら教えてよ」

「須藤君もって、私もまだミコに連絡先教えてないよ」

「イチはもう知ってるから大丈夫」

「……え?」



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