「大丈夫だよ、きっと」


須藤君はモーニングのトーストに付いてきたゆで卵の殻を剥きながら言った。

運悪く剥きにくい卵を引いてしまったのだろう。ボロボロに割れた殻の破片を取るのに悪戦苦闘していた。


「ふふっ……」

「何?」

「剥きにくそうだなって思って。返事送ってみるね」


必死になっている須藤君を見ていたら、なぜだか自然と肩の力が抜けてきた。本人はそんなつもりなんて無いと思うから、今は背中を押されたお礼は言わないでおこう。

一度は閉じたSNSをもう一度開き、なるべく短めにメッセージを送信する。

返事はすぐに返ってきた。


「ミコ、こっちに来てくれるって」

「良かったじゃん。って、陽木さん、手、震えてるよ」

「だって、こんなにもあっさりミコと会えるなんて思ってなかったから」


会ったところで何を話せば良いんだろう。いや、今まであんなにも学校で仲良くしてたじゃん。今更何をびびってるんだ。


「じゃあ、僕はこの近くを散策してくるよ」

「ちょ、ちょっと」

「2人で話す方が良いよ」


気を遣ってくれなくても良いのに、須藤君はアプリで自分のカフェ代を送金すると、「また連絡して」と言い残してお店を出て行ってしまった。

取り残されたら途端にさらに不安が襲ってきて、ミコを待つ間お腹が痛くなって2回お手洗いを往復した。