乗り換えの駅に着く頃になると、既に一生分電車に乗っていたんじゃないかって思うくらいに背中が痛くなっていた。

脚に血が溜まってくるし、背中や腰はもうバキバキ。

なのに須藤君は「今から乗る列車はエンジンで動くから電車とは言わないんだよ」なんて、別に訊いてもいないことを得意げに話してきたから、あえて聞こえないふりをした。

2両しか繋がっていないクリーム色のくたびれた列車に乗り変え、今度は40分くらい揺られ続ける。ここまで来ると席に座っているのも中々の苦行だ。

目的の駅に到着してホームに降りると、一目散に「うーん」と声が出るほど大きく伸びをしたり、腕や首ををぐるんぐるん回したりして身体をほぐす。

到着した駅周辺の街並みは想像よりもずっと都会的だった。

もちろんビルのような高い建物はないけれど、代わりに最近できたような真新しい居酒屋やカフェが連なっていた。

途中で景色が田んぼばかに変わったから、てっきり昔話に出てくるような茅葺(かやぶ)き屋根の建物を想像していたんだけど。

お洒落なカフェは気が引けるからという理由で、私達はわざわざ見慣れたチェーン店のカフェに入ることにした。ここだと無料のモーニングもあるし、学生の私達には合っている。


「間違いない。今日の投稿も荒牧海岸だ」

「でも、予約投稿をしているかもしれないから、そこに行ったとは限らないんじゃない?」

「わざわざ日記みたいに日付まで書いてるし、干潮の写真を投稿しているから、朝撮ったことは間違いないと思う。ところで、DM来てるよ」

「ミコからだ……!」


モーニングを食べ終え一息ついてSNSを見ていたrあ、突然通知欄に赤いマークが付いた。


「”あなたは誰ですか?”って、めっちゃ警戒されてる」

「陽木さんに気が付いていないんじゃないかな。近くに来てるって言ったら喜ぶんじゃない?」


いや、でも、こちとら結構無視されてるし、って違うか。全部私の勘違いだったっけ。

でも、今まで誰とも連絡先を交換していないのは、きっと踏み入れられたくないことがあるからだ。

望んでいないのにわざわざこんなところまで出向いてきたことを、ミコは素直に受け入れてくれるだろうか。

先に進むのが怖くなってきた。