ようやく切符を買い終え、ホーム続く階段を駆け降りる。既に電車はドアを開けて待っていた。
須藤君はスピードを落とすことなくドアに向かって直走り、私はそれに引っ張られ、なんとか乗り込むことに成功した。
タイミングを見計らうようにドアが閉じられたから、ひょっとして私達を待ってくれたのかのかも、なんて思ったのも束の間。すぐに「駆け込み乗車は危険ですのでおやめください」とアナウンスで叱られた。
空いている席に座ると、大きく深呼吸をする。
毎日自転車通学をしているから体力はある方だと思っていたけれど、いつぶりかわからない全速力に心臓が悲鳴を上げていた。
「ごめん。いつものように部活の友達と出かける感覚でいたよ」
須藤君がさっきコンビニで買ったミネラルウォーターを渡してくれた。
「ありがと。私の方こそごめんね」
謝られた時は、大抵こちらも謝り返して立場を平等に持っていく。いつの間にかそういう癖を身に付けていた。
気を紛らわすように、窓から見える景色を撮影してSNSに投稿する。通知欄のマークを期待したけれど、いつもと同じ光景だった。
「そう言えば、鈴木さんって陽木さんのお母さんなの?」
「え?」
「だって、昨日言ってたじゃん」
唐突にそう言われて、思わず声を失う。あの時ケイの失言を上手く誤魔化せたと思っていたのに、しっかりと記憶されていた。
常識的に考えてあり得ないことをわざわざ訊いてくるのは、揶揄っているだけなのだろうかと勘繰ってしまう。
それでも、思い切って話してみたいと思ったのは、決して須藤君がそういう人間じゃないって思ったから。
「ミコは亡くなったお母さんにそっくりなんだ」
「もしかして、陽木さんが鈴木さんに会いに行くのって……」
「うん。半分はお母さんに会いに行くって思ってる。変だよね」
須藤君は何も言わず、反対側の窓から見える外の景色に視線を移す。つられるように私もぼんやりと外の景色を眺めた。
須藤君はスピードを落とすことなくドアに向かって直走り、私はそれに引っ張られ、なんとか乗り込むことに成功した。
タイミングを見計らうようにドアが閉じられたから、ひょっとして私達を待ってくれたのかのかも、なんて思ったのも束の間。すぐに「駆け込み乗車は危険ですのでおやめください」とアナウンスで叱られた。
空いている席に座ると、大きく深呼吸をする。
毎日自転車通学をしているから体力はある方だと思っていたけれど、いつぶりかわからない全速力に心臓が悲鳴を上げていた。
「ごめん。いつものように部活の友達と出かける感覚でいたよ」
須藤君がさっきコンビニで買ったミネラルウォーターを渡してくれた。
「ありがと。私の方こそごめんね」
謝られた時は、大抵こちらも謝り返して立場を平等に持っていく。いつの間にかそういう癖を身に付けていた。
気を紛らわすように、窓から見える景色を撮影してSNSに投稿する。通知欄のマークを期待したけれど、いつもと同じ光景だった。
「そう言えば、鈴木さんって陽木さんのお母さんなの?」
「え?」
「だって、昨日言ってたじゃん」
唐突にそう言われて、思わず声を失う。あの時ケイの失言を上手く誤魔化せたと思っていたのに、しっかりと記憶されていた。
常識的に考えてあり得ないことをわざわざ訊いてくるのは、揶揄っているだけなのだろうかと勘繰ってしまう。
それでも、思い切って話してみたいと思ったのは、決して須藤君がそういう人間じゃないって思ったから。
「ミコは亡くなったお母さんにそっくりなんだ」
「もしかして、陽木さんが鈴木さんに会いに行くのって……」
「うん。半分はお母さんに会いに行くって思ってる。変だよね」
須藤君は何も言わず、反対側の窓から見える外の景色に視線を移す。つられるように私もぼんやりと外の景色を眺めた。