須藤君は腕を組んでしばらく考え込む。多分、彼は私以上に物事を慎重に考える人間なのだろう。


「わかった。僕も一緒に行く」

「え?」


ケイは口笛を吹いてから「見直した。男じゃん」と言った。


「い、良いよ。無理しなくても」

「ここの街からだと電車を使って3時間以上かかるから、1人で始めて行くのは相当ハードルが高い。それに、よく考えると、自殺の名所に1人で行かせるのも、ちょっと気が引ける」


さっきまであんなに嫌がってたのに、須藤君はミコの名前を聞いた途端、スイッチが入ったかのように積極的になった。

思えばミコが倒れた時に1番初めに駆け寄ってくれたのは須藤君だった。彼はミコを介抱してくれてからも、ずっと気にかけてくれていた。


「ありがとう。須藤くんが来てくれると本当に助かるよ」

「それじゃ、明日の5時に、学校近くの美浜駅に集合しよう」


5時……。

それはちょっと早過ぎないかい、と言いかけたけど、せっかく一緒に来てくれるのにそこまで言っちゃ失礼だと口を(つぐ)む。ケイは隣で笑っているけど、あえて気付かないふりをしておこう。


「わ、わかった。明日、よろしくね」


ホームルームが始まるチャイムが鳴ると、須藤君は、まるでスイッチを押されたように、すぐに反射的に自分の席へと戻って行った。

ケイだけは相変わらず満足そうに鼻歌を歌いながら、ゆっくりと廊下に出て行ってしまった。