何の前触れもなく突然姿を消すように不登校になったミコに対し、私は何もできないでいた。

何度か先生に欠席理由を訊いてみたけれど、個人的なことだからと詳しいことは何一つ教えてくれなかった。

元の時代に帰ってしまったのだろうか。


「良い加減返事くれたって良いのにね。でも不思議、伊智にだけ連絡先を教えていたなんて」


お母さんとのスレッドには、ミコの安否を心配する私のメッセージで埋まっている。メッセージには全部既読が付いていて、それが余計に私を歯痒(はがゆ)い気持ちにさせていた。

そのことを話したら、急にケイの表情が険しくなった。


「それって、本当にミコなの?ちゃんと本人に確認した?」

「してない」

「……呆れた」


ケイはわかりやすく溜息を吐いてから再び私の髪の頭をかき混ぜた。避けようと思えばできたはずなのに、身体がそうしようとしなかったのはどこかで喰らっておいた方が良いと思ったからだ。


「知らない人だったらどうすんのさ。そこの根暗な男子とか」


繊細な須藤くんは、ケイに指を刺されたのに気が付いてすぐに顔を上げる。関係ないのにいつもごめんね。


「須藤くんはそんなことしないって。それに、私のメッセなんて見ても誰も得しないよ」

「世の中にはヤバい奴ばっかだよ。あんた、そういうの疎いから気を付けな」


悔しいけど、学校以外にも居場所を持っているケイにそう言われると、何も言い返せない。


「そういえば、ミコってSNSやってたよね。そこから直接連絡すれば良いじゃん」

「知ってたらもう送ってる」

「あんたら、それでよく仲良くしてたね」


ケイは許可なく私の前の子の椅子に座ろうとしたから、私はすかさず窓際の方へと移動してケイを椅子から遠ざけた。


「もう1回アカウント探してみたら?どうせあの子、空しか写してないんでしょ」

「鳥の羽とか、虫とかも撮ってた」

「野生児か」


あまり気乗りしなかったけど、ケイに言われた通りSNSの検索機能で学校周辺の投稿情報を調べてみた。


「ストップ……これじゃない?」


画面をスクロールさせていたら、ケイは青空の写真の投稿を見つけた。