食べられないって、言ってたのに。


「イ、イチもこっち来る?風が気持ち良いよ」

「行かない」


はっきりと言い切ったのは、ミコの隣にいたケイに意思表示をするという意味と、裏切られたことへの反感との両方の意味があった。

幼稚だってわかってる。けれど、感情を込めずにはいられなかった。


「伊智、悪いけどこいつ連れて帰ってくんないかな。鬱陶(うっとう)しいって思ってたんだ」


ケイはわざとらしくミコを指刺し、棘を含んだ言葉を向けた。

それがケイなりの警鐘(けいしょう)の鳴らし方だってすぐにわかった。わざわざ連絡をよこしてくれたのは、多分ケイなりの最大限の配慮なのだろう。


「ミコ、行こう」

「……わかった」


私達の緊張感が伝わったのか、ミコは素直に立ち上がると、名残惜しそうにちらりとケイを見てからこっちに来た。

怒っているとか怯えているとか、そんなんじゃなくて。友達との別れを寂しがるそれと似ているようだった。

ケイはそんなミコの視線からは何も()み取ろうとしなかった。

それどころか、ケイは私達の方に見向きもせずに、残った唐揚げを口に入れてから野良猫を追い払うかのように、シッシと手を振った。