昇降口に着くと、生徒指導の先生が自販機でコーヒーを買っていたから、やり過ごすために何度か前を通り過ぎた。
もどかしくて何度も先生の方を見てしまったけれど、この様子だと気付かれていなさそう。
ようやく裏手に回ることに成功すると、騒がしい声がする方へとそっと顔を覗かせる。
「ミコ……わっ!」
呼び掛けただけなのに、想像以上に柄が悪そうな連中の鋭い視線を一気に集めてしまって、私は思わず顔を引っ込める。今絶対寿命が縮んだ。
心の中でやっぱり帰ろうか、なんて弱音を吐いていると、角の向こうから探し求めている子の声がした。
「イチ!」
ミコだ。
再びそうっと顔を覗かせると、柄の悪そうな中にミコの姿が混ざっていた。しかもミコは手に入れたばかりのスマホ片手に両足を伸ばして寛いでいる。
乱れた服装のいけ好かない連中の中に、似合わない可愛らしい童顔少女が混ざっている。この光景、違和感ありすぎなんですけど。
想像できる限りの悪いことを考えていたのに、どうやらそれは私の行き過ぎた妄想だったみたいで拍子抜けした。
ミコとケイの姿を見たら、不思議と鋭い視線は気にならなくなった。
それどころか、何となく心がもモヤついて来た。ミコが汚されると思ったからなのか、それとも他の子達と仲良くしているのに対する嫉妬からなのかはわからない。
それよりも。
「ミコ、食べられないんじゃなかったの?」
「あ……うん。少しなら、大丈夫、かな」
滲ませた悪意が伝わってしまったんだと思う。
ミコは隠すように手に持っていた一口サイズの唐揚げをさっと口の中に放り込むと、ガムを噛むようにいつまでも咀嚼し、覚悟を決めたように大袈裟にそれを飲み込んだ。
もどかしくて何度も先生の方を見てしまったけれど、この様子だと気付かれていなさそう。
ようやく裏手に回ることに成功すると、騒がしい声がする方へとそっと顔を覗かせる。
「ミコ……わっ!」
呼び掛けただけなのに、想像以上に柄が悪そうな連中の鋭い視線を一気に集めてしまって、私は思わず顔を引っ込める。今絶対寿命が縮んだ。
心の中でやっぱり帰ろうか、なんて弱音を吐いていると、角の向こうから探し求めている子の声がした。
「イチ!」
ミコだ。
再びそうっと顔を覗かせると、柄の悪そうな中にミコの姿が混ざっていた。しかもミコは手に入れたばかりのスマホ片手に両足を伸ばして寛いでいる。
乱れた服装のいけ好かない連中の中に、似合わない可愛らしい童顔少女が混ざっている。この光景、違和感ありすぎなんですけど。
想像できる限りの悪いことを考えていたのに、どうやらそれは私の行き過ぎた妄想だったみたいで拍子抜けした。
ミコとケイの姿を見たら、不思議と鋭い視線は気にならなくなった。
それどころか、何となく心がもモヤついて来た。ミコが汚されると思ったからなのか、それとも他の子達と仲良くしているのに対する嫉妬からなのかはわからない。
それよりも。
「ミコ、食べられないんじゃなかったの?」
「あ……うん。少しなら、大丈夫、かな」
滲ませた悪意が伝わってしまったんだと思う。
ミコは隠すように手に持っていた一口サイズの唐揚げをさっと口の中に放り込むと、ガムを噛むようにいつまでも咀嚼し、覚悟を決めたように大袈裟にそれを飲み込んだ。