ふと目が開けると幼いみんながいた。みんなでいた。
「おーい、早くこないと置いてくよー」
そんなふうに言われて、瞬きをしたら白い天井が見えた。
 「幸樹(こうき)?」
横に目を向けてみると、驚いた顔で目を腫らした雄登と蓮登がいた。2人が一緒にいるのは久しぶりに見た気がする。
「なんで?俺は…」
あの高さなら即死できたはずだ。なんで俺は生きてるんだ。
「蒼詩がお前が学校に来なくなったことを先生に聞いて、秘密基地に行ったら会えると思っていったら、木の上にいるのを見つけて、様子を見てたら落ちてきたって言ってた。蒼詩がお前のことを受け止めてくれたらしい。」
冷静に説明している雄登の後ろのドアから蓮登が呼んできた看護師と医師がいた。
 「君の親に連絡が取れないんだけど理由は知ってるかい?」
一通りの診察を終えたあとにそう聞かれてなんと言おうか悩んだけど、素直に伝えることにした。
「半年前に出ていって、それ以来は時々仕送りが来るだけです。顔も思い出せません。もしかしたら電話番号を変えたのかもしれないです。」
淡々と告げるのを聞いて医師は絶句した。
「それは、もう虐待だよ。」
 虐待、たしかにそうかもなあと思った。医師は「警察と児童相談所にも連絡を入れるから」といって病室をあとにした。幸いにも大きな怪我がなく、二週間ほどで退院できるらしい。行く宛もないけど。フラフラとそんな事を考えながら歩いていたら、人にぶつかった。
「す、すみません…」
そう力なく答えて立ち上がろうとすると腕を掴まれた。
「お前なあ、なに立ち去ろうとしてんだよ。こちとら足捻ったんだよ!金払えよ!」
ああ、めんどくさい人にぶつかってしまったなと思った。
どうしようかな、ここで逃げても追いかけてくるだろうし…
「おい!てめえ聞いてんのか!?ガキが舐めた態度取ってんじゃねーぞ!」
「では、あなたがガキと言った彼と同い年の僕からいくつか言わせていただきます。一つ、あなたはわざとぶつかりましたよね?それで自分が被害者だと思うのはおかしいと思います。」
「はあ?イチャモンつけてんじゃねーぞ!」
「そう思っても構いませんが、防犯カメラもこの現状を見ている人たちも証拠、証人になります。」
確かに、冷静に周りを見てみると多くの人が集まっていた。
「二つ目、あなたは足を捻ったと言いましたよね?その割には立ち上がって無気力の男の子を片手で持ち上げられている。あなたが相当筋力おばけじゃない限り無理です。また、その場合は足を捻るなんて到底ないでしょう。警備員を読んだのでそこで大人しく待っていてください。」
淡々と喋り、男を論破していく少年の後ろ姿に見覚えがあった。
「颯照?」
「久しぶり、病室に戻ろうか。」
静かに笑う颯照は最後にあったときとは全く別人の顔つきだった。