俺は学校に行かなくなった。親も心配して何度も声をかけてくれたけど、俺は、
「大丈夫、ちょっと問題があって気まずいだけだから、気持ちの整理ができるまで待って。」
そんな口だけの言葉ばかり並べていた。
家事は進んでしたし、勉強も遅れを取らないように独学だけでなんとかしていた。
 でも、俺は学校に行けなかった。何度も何度も行こうとしたけど、家の外に出ただけで吐き気がして立ってられなかった。ついには両親にも隠せなくなり、俺は親に今までされてきたことを打ち明けた。
 言ったらわかってくれると思った。「気づいてあげられなくてごめん」って言われるかと思った。でも、現実は甘くなくて、2人は俺の話を聞くなり、
「ああ、そう。」
「だからといってずっと休んでいていい理由にはならない。たとえ家のことを手伝おうが、独学で頑張ろうがな。」
二人の言葉は重く、暗く、俺の心に滲んでいった。
 親にわかってもらえない。スマホを取られたから誰かに助けを求めることもできない。家の外が怖くて出られない。段々と今までできてたことができなくなった。勉強ができない、家事ができない、物が食べられない、眠れない。
 追い打ちをかけるように、俺のことをいじめてきてた奴らが家を特定して、ポストに悪質な手紙を入れるようになった。親もそんな俺に呆れ果てて、両親はふたりとも出ていって、毎月生活費を送りつけてくるだけになった。








 生きることが辛くなった。何もできない自分に嫌気が差して、こんな自分がいなくなっても誰も気にしないと思えて、中学二年生のクリスマスに半年ぶりに外に出た。向かう場所は決めていた。
 山を登って、頂上に来た。小さな山だから三十分もしないで登りきれた。古びたテントがある。昔、俺があいつらと過ごした秘密基地だった。ここには登りやすくて、かなりの高さのある大木があって、そこに登って夕日を眺めるのが好きだった。今はその夕日も白黒に見えて、俺は最後にここに来れてよかったと思った。

 次の瞬間、足元が歪んだ。