「えっと、待ってくれ。頭が追い付かないんだけど」

 突然俺の前に現れた短い銀色の髪をした女の子。

 その少女は俺が【ユニークスキル 助手】を発動したから、現れたと言っていた。

 スキルを使用すると人間が召喚される? そんなことありえるのだろうか?

 単純に俺をからかっているだけとかなのか? いや、俺なんかをからかったところでどうするんだ?

 だ、だめだ。質問ばっかり頭に思い浮かんでしまって考えがまとまらない。

「そうですね、どこから説明しましょうか?」

「できれば初めからお願いしたいが……とりあえず、薬草取りのクエストを終わらせてからでいいか?」

「わかりました。私もお手伝いしますね!」

「いや、いいって。これ俺が受けたクエストだし、俺がやるから休んでてくれていいよ」

「助手が一人で休んでいる訳にはいきませんよ! 早く終わらせて街に帰りましょ?」

 そんなことを言うと、助手の女の子は雑草をかき分けるようにして薬草を探し始めた。

 確かに、こんな森に長時間ぼうっといるよりは、一緒に作業をして早く終わらせて帰った方がいいのかもしれないな。

特に、女の子ならそう思うのかもしれない。

 ここで渋っても仕方がないし、何よりももう勝手にやり始めてるし。

「それじゃあ、お願いしようかな。えっと、名前を聞いてもいいかな?」

「名前……名前、ですか。アイクさんがつけてください。私、名前ないので」

「名前がないって……なんか、本当に俺のスキルで生まれたみたいだな」

 いよいよ、この女の子が言っていたことに真実味が帯びてきた。いや、真実味なんてあっていい話ではない気がするのだけれども。

「な、名前。名前かぁ」

 突然、同い年くらいの少女の名前を付けろと言われて、俺は頭を悩ませてしまった。

 何か適当な名前でも付けたら、本当にその前を生涯大事にしそうなくらいの期待の眼差しをこちらに向けている。

 そんな目で見られても、大した名前なんて出てこないぞ。

 俺は何とか頭を捻らせて、少ない語彙力の中からなんとか可愛らしい名前はないかと考えを巡らせた。

「……リリって、言うのはどうだ? 昔、その髪に似た綺麗な花を見たことがあったんだよ。確か、その花の名前がリリィだった気がするから、そこからとってリリっていうのはどうかな?」

「リリ……はい、いい名前ですね。その名前を名乗ることにします!」

 名前の由来が気に入ったのか、リリは顔をほころばせて喜んでいるようだった。それから、照れるように銀色の髪を指に巻いていじったりしている姿が可愛らしく、思わずドキリとしてしまった。

 初対面の女の子の髪を間接的に褒めたことになってしまい、変な口説き文句になってしまった気がしたので、俺は気にしていないフリをして黙々と薬草の採取をすることにした。

 それから、しばらくの間作業するとすぐに薬草を集めることができた。本数的にも少し多いくらいの量が取れたので、クエストは無事に完了した。

 あとは、戻ってギルドに薬草と報告に行けば終わり。

 終わりなのだが、本来の目的は俺のスキルを試すことだった。

 しかし、リリもいるわけだし長くこの場に残るわけにもいかないだろう。

 そう思ってこの場を離れようとしたとき、距離の離れている雑草が動いたのが分かった。

 俺は腰に下げていた短剣を引き抜いて、そちらのほうに切っ先を向けた。

 この森には大型の魔物などはでないはず。王都にいる初心者でも狩れるレベルの魔物しか出てこない。

 それなら、俺でもやれるはずだ。

「アイクさん。【気配感知】と【剣技】を使ってくださいね」

「お、おう。……え、なんで俺のスキルのこと知ってるんだ?」

 ただの【鑑定】持ちなのかもしれない。それでも、この状況で俺よりも俺のスキルの使い方について詳しいような口ぶりだ。

 俺が不思議そうな顔をしていると、リリはただ一言だけ言葉を口にした。

「助手ですから」

 得意げな笑みの裏にどんなことを考えているのか、俺には何も分からなかった。