ミノラルから馬車で数日離れた森の奥。ミノラル周辺の森よりも魔物が活発的で、商人たちは遠回りをしてでも迂回する街。
魔物の多さから積極的に散策されていないため、まだ見つかっていないダンジョンが多くあるとされている場所。
その一方で、ダンジョンで一攫千金を狙う冒険者たちからは人気の高い街、エルシル。その森の奥に、俺たちは来ていた。
「これが。ガリアさん達が言っていたダンジョンですか」
「そうみたいだな。……そういえば、三人でダンジョンに入るのは初めてだよな?」
ガリアから貰った地図に沿って歩いていくと、森の奥の方にひっそりと現れたようなダンジョンの入り口があった。
石レンガのような物が積まれてできているダンジョンの入り口。その正面には、身の丈よりも優に大きな扉が俺たちの前にそびえ立っていた。
俺たちはいくつかのクエストを受けてきたが、そのどれもが討伐系のクエストばかりだった。
鉄鉱石とかの採取もしたことはあったが、あれも気づけば討伐系のクエストになっていたしな。
そっちの方が効率が良かったこともあって、このような採取や探索というクエストに触れる気があまりなかった。
「今回行方が分からなくなったA級パーティっていうのも、結構なベテラン冒険者たちらしい。過去にも同じような依頼を受けて、失敗したことはなかったらしいんだけどな」
ガリア達の話によると、そのパーティはダンジョンの探索を得意としているパーティとのこと。
全員がA級の冒険者から構成されたパーティで、ギルドからの信頼も厚いとのこと。
そんなパーティが失敗するほどのダンジョンなのかと思うと、ダンジョンに入るのも少し躊躇ってしまう。
「俺はダンジョンにはあまり入ったことないから、各々気をつけてくれな」
「分かりました」
「きゃんっ!」
「……まぁ、この三人なら、よっぽどのことがない限り、問題はないと思うけどな」
間髪入れずに返ってきた返答を前に、俺は小さく安堵のため息を漏らしていた。
そうだよな。正直、俺たちでも無理ならどうしようもないだろう。
そう思うと、少しだけ緊張していた気持ちも楽になった気がした。
「それじゃあ、行くぞ」
俺は二人に目配せをしてから、ダンジョンの重い扉を押し開けたのだった。
そんな風に、少しだけ意気込んでダンジョンに臨もうと思っていたのだがーー。
「【罠感知】『結界魔法』。よしっと。アイクさんとポチは、私の後ろ歩いてきてくださいね」
「ああ、ありがとうな」
「きゃんっ!」
石レンガを積んでできたような内装に、薄暗い洞窟のような湿りけを感じるダンジョン内。魔法で辺りを照らしながら進んでいく道は、危険が多く潜んでいるはずだった。
そう、はずだったのだ。いや、今も危険はあるのだろう。
先頭を歩くリリは【罠感知】で罠の場所を見つけると、その上に結界を張ってその道を安全地帯に変えてくれる。
なので、危険が俺たちに降りかかるようなことはなかったのだ。
整えられた道を歩く俺とポチは、ダンジョン探索というよりはただウォーキングをしているだけだった。
おかしいな。ダンジョンってこんな感じだったっけ?
ダンジョンを専門で行っている冒険者たちに知られたら怒られそうな攻略法だが、今はA級パーティの生死がかかっているということで、目をつぶっていただきたい。
……目をつぶっていても、このまま最下層まで行けそうな勢いだな。
「きゃんきゃんっ!」
「ん? ポチも魔物の相手をしたいですか? 分かりました。今度出てきた魔物はポチにお任せします」
手持ち無沙汰すぎたのか、ポチはリリのすぐ後ろまで走っていき、魔物相手をさせて欲しいとねだっていた。
まぁ、さっきから魔物現れたら、そのままリリが対処していたしな。何か自分もやりたいと思ったのだろう。
確かに、このまま何もしないでリリの後ろをついていくというのも、結構暇だしな。
……俺も何かしら役割を担った方がいいだろうか。
そんな事を考えながら、俺はそれとは別でどこか引っかかるものがあった。
行方が分からなくなったA級パーティだって、【罠感知】のスキルは持っているだろうし、A級パーティが苦戦するほどの魔物ともまだ出会っていない。
これって、本当にA級パーティが帰って来られないほどのダンジョンなのか?
そんな俺のふとした疑問は、しばらくの間解消されることはなかった。
魔物の多さから積極的に散策されていないため、まだ見つかっていないダンジョンが多くあるとされている場所。
その一方で、ダンジョンで一攫千金を狙う冒険者たちからは人気の高い街、エルシル。その森の奥に、俺たちは来ていた。
「これが。ガリアさん達が言っていたダンジョンですか」
「そうみたいだな。……そういえば、三人でダンジョンに入るのは初めてだよな?」
ガリアから貰った地図に沿って歩いていくと、森の奥の方にひっそりと現れたようなダンジョンの入り口があった。
石レンガのような物が積まれてできているダンジョンの入り口。その正面には、身の丈よりも優に大きな扉が俺たちの前にそびえ立っていた。
俺たちはいくつかのクエストを受けてきたが、そのどれもが討伐系のクエストばかりだった。
鉄鉱石とかの採取もしたことはあったが、あれも気づけば討伐系のクエストになっていたしな。
そっちの方が効率が良かったこともあって、このような採取や探索というクエストに触れる気があまりなかった。
「今回行方が分からなくなったA級パーティっていうのも、結構なベテラン冒険者たちらしい。過去にも同じような依頼を受けて、失敗したことはなかったらしいんだけどな」
ガリア達の話によると、そのパーティはダンジョンの探索を得意としているパーティとのこと。
全員がA級の冒険者から構成されたパーティで、ギルドからの信頼も厚いとのこと。
そんなパーティが失敗するほどのダンジョンなのかと思うと、ダンジョンに入るのも少し躊躇ってしまう。
「俺はダンジョンにはあまり入ったことないから、各々気をつけてくれな」
「分かりました」
「きゃんっ!」
「……まぁ、この三人なら、よっぽどのことがない限り、問題はないと思うけどな」
間髪入れずに返ってきた返答を前に、俺は小さく安堵のため息を漏らしていた。
そうだよな。正直、俺たちでも無理ならどうしようもないだろう。
そう思うと、少しだけ緊張していた気持ちも楽になった気がした。
「それじゃあ、行くぞ」
俺は二人に目配せをしてから、ダンジョンの重い扉を押し開けたのだった。
そんな風に、少しだけ意気込んでダンジョンに臨もうと思っていたのだがーー。
「【罠感知】『結界魔法』。よしっと。アイクさんとポチは、私の後ろ歩いてきてくださいね」
「ああ、ありがとうな」
「きゃんっ!」
石レンガを積んでできたような内装に、薄暗い洞窟のような湿りけを感じるダンジョン内。魔法で辺りを照らしながら進んでいく道は、危険が多く潜んでいるはずだった。
そう、はずだったのだ。いや、今も危険はあるのだろう。
先頭を歩くリリは【罠感知】で罠の場所を見つけると、その上に結界を張ってその道を安全地帯に変えてくれる。
なので、危険が俺たちに降りかかるようなことはなかったのだ。
整えられた道を歩く俺とポチは、ダンジョン探索というよりはただウォーキングをしているだけだった。
おかしいな。ダンジョンってこんな感じだったっけ?
ダンジョンを専門で行っている冒険者たちに知られたら怒られそうな攻略法だが、今はA級パーティの生死がかかっているということで、目をつぶっていただきたい。
……目をつぶっていても、このまま最下層まで行けそうな勢いだな。
「きゃんきゃんっ!」
「ん? ポチも魔物の相手をしたいですか? 分かりました。今度出てきた魔物はポチにお任せします」
手持ち無沙汰すぎたのか、ポチはリリのすぐ後ろまで走っていき、魔物相手をさせて欲しいとねだっていた。
まぁ、さっきから魔物現れたら、そのままリリが対処していたしな。何か自分もやりたいと思ったのだろう。
確かに、このまま何もしないでリリの後ろをついていくというのも、結構暇だしな。
……俺も何かしら役割を担った方がいいだろうか。
そんな事を考えながら、俺はそれとは別でどこか引っかかるものがあった。
行方が分からなくなったA級パーティだって、【罠感知】のスキルは持っているだろうし、A級パーティが苦戦するほどの魔物ともまだ出会っていない。
これって、本当にA級パーティが帰って来られないほどのダンジョンなのか?
そんな俺のふとした疑問は、しばらくの間解消されることはなかった。