イリスの護衛の依頼中。盗賊団による襲撃を瞬時に押さえ込むことができたと思ったのだが、そこには新たに三人の刺客が送られてきた。
さっきまで相手をしていた盗賊団とは力の差がありすぎる刺客。
そして、その中には以前にワルド王国で敵わなかった男の姿もあった。
盗賊団から話を聞いていた裏傭兵団。その組織が突如俺たちの目の前に現れたのだった。
「なんだ、ランドが捕まったのか」
「ランドが? うおっ、マジじゃんか」
そして、その後ろから三人の男が近づいてきた。
身の丈ほどの大きさのある杖を持った者や、大きな盾を構えている者、短剣を構えた軽装備の者などが、ワルドであった男の後ろから現れた。
「……嘘だろ」
一対一の戦いなら、ワルドであった男にもおそらく負けることはない。
それだけ強くなった自信もあったし、それを証明したいとも思っていた。
ただその男と同等程度の強さがあるかもしれない相手を、同時に六人相手にできるかどうかと言われると、さすがに厳しいのではないかと思ってしまう。
思わず苦笑いでそんなことを呟いてしまうくらい、俺は追い込まれてしまっていた。
冷や汗が頬を伝って、危険信号によって心臓音が嫌な速度になっていた。
「うおぉらっ!」
そして、そんなふうに微かに意識を逸らした瞬間、初めに捕らえたはずの男が大声と共に、影で縛っていた拘束を強引に振りほどいた。
大型の魔物をしばらくの間拘束しておけるだけの強度のある拘束を、無理やり力でちぎるようにして。
「掴まってなんかいねーぞ! 適当ぬかすな!」
ラルドと呼ばれた男は後ろからやってきた仲間にそんな言葉を吐くと、俺を睨みつけると、照準を合わせて大きな体で突っ込んできた。
おそらく、何かしらのスキルを使用しているのだろう。一気に間合いを詰めるように、こちらに突進でもするかのような勢いで突っ込んで来ている。
意図せず一対一の構図になったのは幸いだった。
俺はその男の動きに合わせて、カウンターでスキルを叩きこもうとしているとーー俺の視界に短剣を引き抜いた男の影が映った。
「ぐっ!」
咄嗟にその攻撃を短剣を引き抜いて防ぐと、その一瞬の隙に、大剣を構えた男が大剣を俺の頭に叩き込もうとしていた。
「【アイテムボックス】」
俺が咄嗟に【アイテムボックス】を使用すると、何もない所から数本の短剣が現れて、二人の男の体を貫いた。
【投てき】のスキルを使用した状態で、その勢いと力を溜め込んでいた短剣は、そのまま男たちを数本ずつ突き刺した。
そして、それを食らった男たちはその短剣の勢いを殺すように後方に跳びながら、俺との距離を取った。
「くそっ! なんだあいつは!」
「いってぇな」
しかし、咄嗟に放った攻撃ということもあって、相手の致命傷になることはなかったらしく、そこまでのダメージを与えることができなかった。
男たちは短剣を引き抜いてその辺に捨てると、少しだけ顔を歪めたが、すぐにこちらに向き直っていた。
それどころか、ラルドと呼ばれていた男に関しては、ただ怒りを買っただけみたいだった。
くそっ、一対一になったと思った考えが間違いだった。
そもそも数的に有利な状況で、相手がわざわざ一対一の構図を作らせてくれるはずがない。
たった二人を相手にしただけだというのに、さっきは間一髪だった。
道化師としての間合いを意識していたというのに、短剣を持っている男には一瞬で距離を詰められてしまった。
意識がラルドの方に向いていたということはあるが、それだけではない気がする。
何かスピードに特化したジョブなのか?
俺がその男との距離感を測りながら、次の一手を考えていると、不意にワルドで会った男と目が合った。
「短剣を投げつける戦闘スタイル……ん? おまえ、その短剣」
そして、俺の手に握っていた短剣を確認すると、俺に向けていた瞳の色を変えた。
「はんっ、なんだよおい、完全に思い出したぜ」
興味深いものを見るようで、ずっと探していた物を見つけたようにも見える瞳。そんな瞳でこちらを見つめながら、男は意味ありげに口元を緩めていた。
「久しぶりだな、色男。今日も姫様を守ってんのかよ」
そんな言葉を口にすると、その男の纏っている空気が変わった気がした。
……いよいよ、冗談じゃ済まなくなってきたな。
こうして、俺は圧倒的不利な状況でのリベンジマッチを迎えることになったのだった。
さっきまで相手をしていた盗賊団とは力の差がありすぎる刺客。
そして、その中には以前にワルド王国で敵わなかった男の姿もあった。
盗賊団から話を聞いていた裏傭兵団。その組織が突如俺たちの目の前に現れたのだった。
「なんだ、ランドが捕まったのか」
「ランドが? うおっ、マジじゃんか」
そして、その後ろから三人の男が近づいてきた。
身の丈ほどの大きさのある杖を持った者や、大きな盾を構えている者、短剣を構えた軽装備の者などが、ワルドであった男の後ろから現れた。
「……嘘だろ」
一対一の戦いなら、ワルドであった男にもおそらく負けることはない。
それだけ強くなった自信もあったし、それを証明したいとも思っていた。
ただその男と同等程度の強さがあるかもしれない相手を、同時に六人相手にできるかどうかと言われると、さすがに厳しいのではないかと思ってしまう。
思わず苦笑いでそんなことを呟いてしまうくらい、俺は追い込まれてしまっていた。
冷や汗が頬を伝って、危険信号によって心臓音が嫌な速度になっていた。
「うおぉらっ!」
そして、そんなふうに微かに意識を逸らした瞬間、初めに捕らえたはずの男が大声と共に、影で縛っていた拘束を強引に振りほどいた。
大型の魔物をしばらくの間拘束しておけるだけの強度のある拘束を、無理やり力でちぎるようにして。
「掴まってなんかいねーぞ! 適当ぬかすな!」
ラルドと呼ばれた男は後ろからやってきた仲間にそんな言葉を吐くと、俺を睨みつけると、照準を合わせて大きな体で突っ込んできた。
おそらく、何かしらのスキルを使用しているのだろう。一気に間合いを詰めるように、こちらに突進でもするかのような勢いで突っ込んで来ている。
意図せず一対一の構図になったのは幸いだった。
俺はその男の動きに合わせて、カウンターでスキルを叩きこもうとしているとーー俺の視界に短剣を引き抜いた男の影が映った。
「ぐっ!」
咄嗟にその攻撃を短剣を引き抜いて防ぐと、その一瞬の隙に、大剣を構えた男が大剣を俺の頭に叩き込もうとしていた。
「【アイテムボックス】」
俺が咄嗟に【アイテムボックス】を使用すると、何もない所から数本の短剣が現れて、二人の男の体を貫いた。
【投てき】のスキルを使用した状態で、その勢いと力を溜め込んでいた短剣は、そのまま男たちを数本ずつ突き刺した。
そして、それを食らった男たちはその短剣の勢いを殺すように後方に跳びながら、俺との距離を取った。
「くそっ! なんだあいつは!」
「いってぇな」
しかし、咄嗟に放った攻撃ということもあって、相手の致命傷になることはなかったらしく、そこまでのダメージを与えることができなかった。
男たちは短剣を引き抜いてその辺に捨てると、少しだけ顔を歪めたが、すぐにこちらに向き直っていた。
それどころか、ラルドと呼ばれていた男に関しては、ただ怒りを買っただけみたいだった。
くそっ、一対一になったと思った考えが間違いだった。
そもそも数的に有利な状況で、相手がわざわざ一対一の構図を作らせてくれるはずがない。
たった二人を相手にしただけだというのに、さっきは間一髪だった。
道化師としての間合いを意識していたというのに、短剣を持っている男には一瞬で距離を詰められてしまった。
意識がラルドの方に向いていたということはあるが、それだけではない気がする。
何かスピードに特化したジョブなのか?
俺がその男との距離感を測りながら、次の一手を考えていると、不意にワルドで会った男と目が合った。
「短剣を投げつける戦闘スタイル……ん? おまえ、その短剣」
そして、俺の手に握っていた短剣を確認すると、俺に向けていた瞳の色を変えた。
「はんっ、なんだよおい、完全に思い出したぜ」
興味深いものを見るようで、ずっと探していた物を見つけたようにも見える瞳。そんな瞳でこちらを見つめながら、男は意味ありげに口元を緩めていた。
「久しぶりだな、色男。今日も姫様を守ってんのかよ」
そんな言葉を口にすると、その男の纏っている空気が変わった気がした。
……いよいよ、冗談じゃ済まなくなってきたな。
こうして、俺は圧倒的不利な状況でのリベンジマッチを迎えることになったのだった。