ルーロとの修行が無事に終わって、俺は一週間ぶりにオラルの屋敷に戻っていた。
今日リリとポチが戻ってくる予定なので、俺はその二人を迎えるためにリビングでくつろいでいたのだ。
俺に黙って修行に行ったということは、二人が修行に行ったことを俺は知らない方がいいのだろう。
実際に、ルーロに出会うまでそのことは知らなかったわけだしな。
リリが俺に話してくるか、実際に敵と戦うまでは二人が修行に向かったことを知らないフリをしていた方がいいかもしれない。
そんなことを考えて二人を待っていると、ノッカーの音が聞こえてきたのが分かった。
サラが二人を迎えに行くのを後ろからついていくと、そんな俺の様子を見て、サラは小さく笑みを浮かべていた。
少しの気恥ずかしさを覚えつつ、俺はサラと共に玄関まで二人を迎えに行った。
そして、サラが玄関の錠を外した先には、一週間ぶりに再会する二人がいた。
「あ、アイクさん。一週間ぶりですっ」
「きゃんっ!」
少し汚れが目立つ服と、微かに砂ぼこりを被ったような髪と白いもふもふ。
疲労感よりも達成感の方が勝っているような表情を浮かべた二人は、一週間前と比べて少し引き締まった顔をしているような気がした。
ルーロ曰く、リリ達が向かった島には、俺が昨日最終試験で倒した魔物みたいなのがうじゃうじゃいるとのことだった。
そんな危険な場所に二人だけで乗り込んだのだ。過激すぎるサバイバル生活を送れば、顔つきだって変わるのかもしれないな。
「あれ? アイクさん、なんか顔つき変わりました?」
「それはお互い様だろ」
まるで思考を読んだかのような言葉を前に、俺は失笑混じりにそんな言葉を漏らしていた。
リリ達が凶暴な魔物達に揉まれたように、俺はS級冒険者に揉まれたのだ。確かに、少しは顔も引き締まっているのかもしれないな。
「おかえり。リリ、ポチ」
「はいっ。ただいま戻りました、アイクさん」
「きゃんっ!」
こうして、俺達は一週間ぶりに再会したのだった。
「え、じゃあ、まだお魚取れてないんですか?」
「あれだ。釣り具屋の在庫が少なくてな、ちょうど今日道具が届いたんだとさ」
修行から帰ってきた二人をお出迎えしたあと、二人はすぐに風呂場に向かった。
まぁ、見るからに服も体も汚れていたし、それだけ厳しい修行環境だったのだろう。
海にも川にも凶暴な魔物がいただろうし、毎日風呂に入れる環境ではなかったのかもしれない。
いや、島に籠っていたのだからそうなるのが普通か。
俺みたいに近くの森で修行をして、しっかり飯を食べて風呂に入って布団で寝るような修行の方がレアかもしれないな。
風呂を出てすっかり綺麗になった二人は、俺の正面に座っていた。
当たり前みたいにリリの太ももに座るようになってしまったポチに対して、少しの寂しさを覚えながら、俺たちは少しまったりとした時間を過ごしていた。
「だから、とりあえず、明日から海魚を捕りに行こうと思うんだけど、どうかな?」
一週間の間に魚を取っておくと言っておいたのだが、結局は修行漬けの毎日になってしまった。
釣り具屋の店主には悪いが、釣り具が中々手に入らなかったことを理由にさせてもらうことにした。
多分、それが一番もっともらしいだろう。
「もちろん、お供します! 私、助手なので!」
「きゃんっ」
久しぶりに聞いた二人の返事に懐かしさを覚えて、笑みを浮かべていると、リリがこてんと小首を傾げていた。
「それなら、今から行っても大丈夫ですよ。まだ、お昼くらいですし」
「いや、今日はさすがにいいって」
「何か用事とかあるんですか?」
確かに今から港に向かって釣りをしても、日が沈むまでにはまだまだ時間がある。
でも、さすがに、修行帰りの二人を釣りに連れ出すほど、俺も鬼畜ではない。
しかし、それを本人たちには言えないし、どうしたものか。
そこまで考えたところで、俺はふと悪くないアイディアを思いついた。
「今日はあれだ。久しぶりにリリの手料理が食べたいから、やめておこう。夕方くらいから、お酒飲んでゆっくりしようぜ」
俺がそんなことを口にすると、リリは瞳を輝かせてポチを抱き上げながら、すくっと立ち上がった。
「そういうとなら、わかりました! 一週間もサラさんの食事を食べて、サラさんの味に胃袋を持っていかれていないか心配でしたが、今日からまたアイクさんの胃袋は私の物です!」
リリはなんかノリノリになってサラの方に指をさして、宣戦布告するようにそんなことを口にしていた。
胃袋を掴んだ記憶もないサラは反応に困った後、少しぎこちない笑顔を浮かべていた。
まぁ、一週間近く胃袋を握られていたのは、サラみたいな可愛い女の子ではなくて、ルーロというおじさんなんだけどな。
……なんかそれは虚しいな。
俺はよく分らない見栄から、とりあえずサラに胃袋を掴まれていることにしておいた。
何はともあれ、『道化師の集い』は一週間振りの再会をすることができたのだった。
互いにどのくらい強くなったのか。それが分かるのはまだ少し先になりそうだった。
今日リリとポチが戻ってくる予定なので、俺はその二人を迎えるためにリビングでくつろいでいたのだ。
俺に黙って修行に行ったということは、二人が修行に行ったことを俺は知らない方がいいのだろう。
実際に、ルーロに出会うまでそのことは知らなかったわけだしな。
リリが俺に話してくるか、実際に敵と戦うまでは二人が修行に向かったことを知らないフリをしていた方がいいかもしれない。
そんなことを考えて二人を待っていると、ノッカーの音が聞こえてきたのが分かった。
サラが二人を迎えに行くのを後ろからついていくと、そんな俺の様子を見て、サラは小さく笑みを浮かべていた。
少しの気恥ずかしさを覚えつつ、俺はサラと共に玄関まで二人を迎えに行った。
そして、サラが玄関の錠を外した先には、一週間ぶりに再会する二人がいた。
「あ、アイクさん。一週間ぶりですっ」
「きゃんっ!」
少し汚れが目立つ服と、微かに砂ぼこりを被ったような髪と白いもふもふ。
疲労感よりも達成感の方が勝っているような表情を浮かべた二人は、一週間前と比べて少し引き締まった顔をしているような気がした。
ルーロ曰く、リリ達が向かった島には、俺が昨日最終試験で倒した魔物みたいなのがうじゃうじゃいるとのことだった。
そんな危険な場所に二人だけで乗り込んだのだ。過激すぎるサバイバル生活を送れば、顔つきだって変わるのかもしれないな。
「あれ? アイクさん、なんか顔つき変わりました?」
「それはお互い様だろ」
まるで思考を読んだかのような言葉を前に、俺は失笑混じりにそんな言葉を漏らしていた。
リリ達が凶暴な魔物達に揉まれたように、俺はS級冒険者に揉まれたのだ。確かに、少しは顔も引き締まっているのかもしれないな。
「おかえり。リリ、ポチ」
「はいっ。ただいま戻りました、アイクさん」
「きゃんっ!」
こうして、俺達は一週間ぶりに再会したのだった。
「え、じゃあ、まだお魚取れてないんですか?」
「あれだ。釣り具屋の在庫が少なくてな、ちょうど今日道具が届いたんだとさ」
修行から帰ってきた二人をお出迎えしたあと、二人はすぐに風呂場に向かった。
まぁ、見るからに服も体も汚れていたし、それだけ厳しい修行環境だったのだろう。
海にも川にも凶暴な魔物がいただろうし、毎日風呂に入れる環境ではなかったのかもしれない。
いや、島に籠っていたのだからそうなるのが普通か。
俺みたいに近くの森で修行をして、しっかり飯を食べて風呂に入って布団で寝るような修行の方がレアかもしれないな。
風呂を出てすっかり綺麗になった二人は、俺の正面に座っていた。
当たり前みたいにリリの太ももに座るようになってしまったポチに対して、少しの寂しさを覚えながら、俺たちは少しまったりとした時間を過ごしていた。
「だから、とりあえず、明日から海魚を捕りに行こうと思うんだけど、どうかな?」
一週間の間に魚を取っておくと言っておいたのだが、結局は修行漬けの毎日になってしまった。
釣り具屋の店主には悪いが、釣り具が中々手に入らなかったことを理由にさせてもらうことにした。
多分、それが一番もっともらしいだろう。
「もちろん、お供します! 私、助手なので!」
「きゃんっ」
久しぶりに聞いた二人の返事に懐かしさを覚えて、笑みを浮かべていると、リリがこてんと小首を傾げていた。
「それなら、今から行っても大丈夫ですよ。まだ、お昼くらいですし」
「いや、今日はさすがにいいって」
「何か用事とかあるんですか?」
確かに今から港に向かって釣りをしても、日が沈むまでにはまだまだ時間がある。
でも、さすがに、修行帰りの二人を釣りに連れ出すほど、俺も鬼畜ではない。
しかし、それを本人たちには言えないし、どうしたものか。
そこまで考えたところで、俺はふと悪くないアイディアを思いついた。
「今日はあれだ。久しぶりにリリの手料理が食べたいから、やめておこう。夕方くらいから、お酒飲んでゆっくりしようぜ」
俺がそんなことを口にすると、リリは瞳を輝かせてポチを抱き上げながら、すくっと立ち上がった。
「そういうとなら、わかりました! 一週間もサラさんの食事を食べて、サラさんの味に胃袋を持っていかれていないか心配でしたが、今日からまたアイクさんの胃袋は私の物です!」
リリはなんかノリノリになってサラの方に指をさして、宣戦布告するようにそんなことを口にしていた。
胃袋を掴んだ記憶もないサラは反応に困った後、少しぎこちない笑顔を浮かべていた。
まぁ、一週間近く胃袋を握られていたのは、サラみたいな可愛い女の子ではなくて、ルーロというおじさんなんだけどな。
……なんかそれは虚しいな。
俺はよく分らない見栄から、とりあえずサラに胃袋を掴まれていることにしておいた。
何はともあれ、『道化師の集い』は一週間振りの再会をすることができたのだった。
互いにどのくらい強くなったのか。それが分かるのはまだ少し先になりそうだった。