波音が静かな海岸に響き渡り、夜空は満天の星で輝いていた。陽炎が海面を揺らし、波が砂浜に打ち寄せる音が、楓の耳を優しく包み込んでいた。彼女は、そこで大きく深呼吸をした。その瞬間、彼女の歌声が空と海を包み込むように響き渡った。


海は彼女にとって、素の自分でいられる唯一の場所だったようだ。そこでは、誰にも何も言われずに、自分自身であり続けることができる。海の静寂と広がりに包まれ、心が解き放たれる瞬間がある。時間を忘れて自由自在に歌を歌い、夢を追いかけることができる。彼女はそう語ってくれたことがあった。彼女は海を愛していた。


僕は今でもあの頃のことを思い出す。世界一幸せで、ずっとこのままでいたいと思っていたあの頃を。でもそれは叶わなかった。
これは3年間の僕の恋の物語。