我路が止めてくれなかったら危なかった。
 命令されるがまま、爺さん達の所に歩いていっていた。
 魅了魔法恐るべし。
 だが我路に触れられたとたんパチンっと何かが切れ、頭がはっきりした。

 なんでだ?

『乱道様、私たち召喚獣にとって魅了は効果がありません』
「……そっそうか」

 我路が俺の心の声を見透かしたように、俺が今一番欲しい答えをくれる。
 有能執事というか……………怖え。

『乱道様。私はかなり腹が立っております。我が主乱道様を、魅了如きで操ろうとするなど……召喚獣如きが許すまじ。私を使ってください。切り刻んでやります。私を使っている間は魅了は効果がありませんので、何も抵抗出来ないでしょう』

 我路がそう言って微笑むんだが、味方の俺でも怖え。笑ってるのに怖え。

「ゴクッ……分かった俺に任せろ」

 なぜルミ野郎の召喚獣が、新たに復活したのかも気になるし、我路はサイの召喚獣に対して怒っている。
 ターゲットはアイツだな。

 俺は我路を抜刀した。

 次の瞬間俺の腕に、我路の魔力が戸愚呂を巻いて絡んでくる。
 相変わらずだが、すげえ力だ。
 刀を持っているだけなのにドンドン力が溢れてくるのが分かる。

「いくぞ我路!」
『任せてください!』

 刀を振り上げ、サイの体を斜め上から下に向かって一閃した。
 次の瞬間。サイの体がズズズッと横にズレ地に着いたかと思った瞬間、光の粒子となりサイ野郎の体は消滅した。
 なんとも呆気ない。

 ルミ野郎はというと乗っていたサイが急に消えて、ドスンっと地面に落ちてキョロキョロと辺りを見回している。

「え? なんで急に召喚獣が消えたんだ!?」
「はぁ? あのな? おバカなお前にも分かるように教えてやろうか? 俺がこの刀で消滅させたんだ」
「な? 何を言って? 召喚獣を消滅!?」
「そのままの意味だよ。お前のサイか? の召喚獣は俺が消滅させた。この刀でな」

 俺はそう言って我路をルミ野郎の顔前に突きつける。

「ひっ!」

 すぐさま爺さん達の所に走って行き、その背に隠れるルミ野郎。
 ったく。相変わらずの小者っぷり。

「で? 爺さん達は他に何か言うことは?」

 俺は我路の刃先をを爺さん達に向ける。

「ひっ! ヒィいいっ!」

 爺さん達は一目散に乗って来ていた馬の魔獣に乗り、ドタバタと来た道を戻っていった。


 ……何がしたかったんだよ。酷すぎないかこの展開は。

『なんという弱さ! この琥珀様に恐れをなしたでちね。しゅっ! しゅしゅっ!』
「ウン。ソウダナ」
 琥珀がパンチを繰り出す。気分はさながらボクサーって感じか。

 取り敢えずは、解決でいいんだよな。
 ……ったく。
 しつこい爺さん達だったぜ。

『乱道様、お疲れ様でした。中々の剣捌きでしたよ? 上達しているようで私は嬉しいです』
「そっそうか……それは嬉しいぜ」
『ただ……なぜルミエールが再び召喚獣を持てたのか、気になる所ではあります』
「確かにな」

 だって、ルミ野郎の得ていた全ての召喚獣を奪ったはずなのに、また新たな召喚獣を得ていた。
 きっとこの謎にも何かあるような気もするが……今日はもう疲れた。頭が考えることを拒否している。

「帰るか」
『はい』

 俺たちは下民街へと戻っていった。