「これは凄えな……!」

 タイタンが前足を踏み鳴らす度。
 その周りに草が生え土の色に命が宿る。
 雑草も育たないほどに、乾き痩せていた土地が見る見る蘇っていくのが分かる。

『ガメラよー! もっと歩くでち!』
「うゆ! うゆ!」
 
 琥珀よ。
 名前が違う。
 そいつはタイタンだ。

 タイタンの頭上に乗った琥珀と稲荷、それにミントまでもが背中の甲羅に乗り、下民街の周辺を闊歩して行く。
 まぁミントは、タイタンが乗せたんだが。
 
 初めは恐る恐るだったミントも、見た目はイカツイがおっとりと優しいタイタンに慣れてきたのか、少しづつ意思疎通が出来ている。

「凄いや! 土が生き返ってるよう。嬉しい」

 ミントがタイタンの甲羅の上で、歓喜の声をあげピョンピョンと飛び跳ねる。
 次の瞬間。
 タイタンが再び唸りを上げる。

『ほう……これは何とも圧巻ですね』
『キャンキャン♪』

 銀狼を抱いた我路の視線の先には。

 下民街を守るように、高さ十メートル以上ある大きな土壁が突如現われた。

「こんな事まで出来るのか……召喚獣ってすげえんだな」
『ふふ。ありがとうございます。私とはまた違った能力ですね』

 我路が嬉しそうに微笑む。そうか召喚獣を誉めたから……我路もか。
 なんか我路は召喚獣って感じがしないからな。
 能力値の高い、イケオジ様と思ってしまう。

 召喚獣によって、それぞれ出来ることが違うんだが。
 タイタンの力は、今の下民街に住む住民達にとって、一番理想的な召喚獣だな。

 枯れて枯渇していた井戸も、タイタンの力により復活しキラキラと水面が輝いている。
 さっきまでドブ水のようだったとは思えない。

「……あっ!」

 そうだ。俺は琥珀の力で、下民の紋消せるんだ。

 この下民街に追いやられていた、下民達の紋を俺が消してあげれば良いんだ。
 紋がなければこの町のどこでも自由に行き来できるんだ。
 仕事だってやりたい仕事が出来るようになるはず。
 それに、差別だってされなくなる。

 よし! そうと決まればミントから消していくか。
 召喚士様の首に下民紋が入ってるなんてどう考えてもおかしいからな。

 俺はタイタンに走って行くと、身体強化を使い背中に飛び乗った。

「お兄ちゃん! 凄いんだよ、僕のタイタン!」
「本当凄えな。でもお前の力でもあるんだぞ?」
「えへへ……これも全部お兄ちゃんのおかげだよ! ありがとう」

 ミントの瞳から、ポロポロと大粒の雫が落ちていく。

「まだ泣くのは早えぞ?」
「ふえっ……」

 俺はミントの頭をクシャリと撫でると、大きな声で琥珀を呼んだ。

『はいでち! 何でちか? 急に大声でワレを呼ぶなんて』

「お前に頼みがあってな?」
『ワレにでちか?』
「ああ。再びタトゥーマシーンの姿になってくれないか? ミントの下民紋を消したいんだ」
『なるほど……ワレに任せるでち!』

 琥珀は再びタトゥーマシーンの姿に変身した。

 俺はタトゥーマシーンとなった琥珀を、優しくミントの下民紋にあてた。

「…………暖かくって気持ちいい……」

 どうやら俺の時と違って、全く痛くないのか、ミントはうっとりと目を瞑る。

「ミント? これでお前の下民紋は、消えてなくなったぜ?」
「え? 下民紋が? 消え?」

 ミントは俺が何を言ってるんだろうと、困惑している。

「これで見てみな?」

 俺はそんなミントに、アイテムボックスから手鏡を取り出し渡した。

「え……下民紋が……僕の紋が。消えてるようっ……」
「な? 消えただろ?」
「ふぅぅぅっ。ふぐっ。しっ信じなれないっよう……夢見たいっううっ」
「夢じゃねーんだなこれが。他の仲間達の紋も消してやるからな?」

 俺がそう言うと、ミントが嗚咽を漏らし泣きじゃくるので、落ち着くまで頭を撫でてやった。

 さてと……今から忙しくなるな。なんせみんなの紋を消すんだからな。
 琥珀にも頑張ってもらわないとだ。
 ご褒美のスイーツも用意しとこう。