頭の上で人の話声が聞こえる。
 俺はいつの間にか眠っていたのか? 
 
 ちょうど良い弾力の枕が心地いいな。
 こんな枕持ってたか? 
 ボーッとしながら、ふと枕に触れると……ん?
 この感触は知っているぞ? 
 感触をもう少し確かめようと枕を手の平で掴む。

「ひゃうっ!?」

「!?」

 急に上から声が聞こえ目を開くと………え?
 二つの大きな山の間から、ウサギ獣人が真っ赤な顔して俺を見ていた。

『乱道様? 許可もなく、いきなり女性の体に触れるのは頂けませんよ?』
「…………女性?」

 我路の声も聞こえ、慌てて飛び起ききると。

 どうやら俺は、ウサギ獣人にひざ枕して貰っていたらしい。

「ボッ……ボクは乱道様になら、もっと触っていただいても大丈夫です」
 
 そう言って桃色に染まった頬を手で隠し、指の隅間から恥ずかしそうに俺を見てくる。
 ええと……これはどう反応したら良いんだ?

「うぉ!?」

 急にガタンッと大きな音と一緒に、座っていた場所が激しく揺れる。
 どうやら馬車に乗っているみたいだ。
 ……てかいつ馬車に乗ったんだ?

 とりあえず、我路から詳しく状況説明を聞いてみた方が早いな。

『乱道様が倒れた後、寝かせる場所として馬車を、そこに居るキャロ様が提供してくださりました』

 我路がそう言ってキャロを見る。
「えへへ」
 キャロは少し照れくさそうに鼻の頭をぽりぽりとかく。

『そしてキャロ様とお話ししていたら、行き先が私達と同じヴィルヘルミナ帝国だと分かると、こうして馬車に相乗りさせて下さいました』

 どうやら俺は三時間も気絶していたらしい。その間に、キャロの護衛の人や仲間たちの手当てなどを終わらせ、ヴィルヘルミナ帝国に向けて出発したんだとか。
 ……良かった。倒れていた人達も無事だったんだな。我路から死者は出なかったと聞いてホッとした。他の人たちは後ろと前を走る馬車に乗っているみたいだ。
 この馬車にはキャロと俺たち以外は乗っていない。二十人は余裕で乗れそうな豪華な馬車を、俺たちで独占させて貰って少し申し訳ないがほんと有難い。

「キャロ、ありがとうな」

 俺がそうお礼を言うと、キャロは頭を横にふり。

「お礼を言うのはボクの方です。乱道様が助けてくれなかったら、みんな今頃魔物の餌となっていたでしょう。本当にありがとうございます。今はこんな事くらいしかお礼できませんが、帝国に帰った時には改めてお礼させてくださいね」

 そう言ってキャロは深々と頭を下げた。

「お礼は馬車に乗せてくれた事でチャラだ。もういいよ」
「そうはいきません! 絶対にさせてくださいね」
 
 もう良いと言ったが、キャロは少し納得していないようだ。
 
 ……てかなんで俺はキャロにひざ枕されていたんだ?

 ちらっとキャロの方を見ると、少し照れくさそうに俺に向かってへにゃりと笑う。
 ……うーむ。聞きずらい。今更むし返して聞くのもな。
 
 ふと前を見ると。
 我路の横で琥珀達三匹が重なるように丸まって寝ていた。

 ったく。気持ちよさそうに寝てるな。

 このまま馬車で国境の街リモットへ行けるようになったのはラッキーだな。
 キャロの話だと、休憩を入れながら馬車で走り続け、三日後に到着予定との事。
 
 山越に時間がかかるみたいだな。

 道にも迷わないし、ほんと有難い。

 今日は後少し走ったところで野営するらしい。
 急に旅の仲間が増えたが、これもまた一興だな。