俺の言葉に震える爺さん達。
 何でそんなに驚いてるんだ? 

 ———もしかして!?

 宝物庫に置いてあった魔法書が、貴重だっだのか!? 盗んだのがバレた?

「…………その魔法は古代魔法で、今やこの世界に使える者などおらん」
 爺さんはそう言ってドカッと椅子に座ると、大きなため息をはいた。

「なぜなら……古代魔法についてや、魔法の詠唱の仕方などが書いてある古文書(こもんじょ)の古代文字を、誰も読めんからじゃ」

 …………えっ!? 読めないだって? 簡単に読めたぞ? 

「お前に聞きたい。なぜ古代魔法が使えるのだ。どこでその魔法を習った!?」

 爺さんが拳を握りしめてドンっと机を叩く。

 これは……言葉を間違えるとヤバいぞ。「本に書いてあるままを読みました」何て事は絶対に言っちゃいけねーのは流石に分かる。

「どこでって……それは企業秘密だ!」

「なっ何じゃ!? そのキギョウヒミツとは!?」

 爺さんが立ち上がり、再び俺に近付こうとして来るも、我路に阻止される。
 ……ったくすぐ近寄ってくんだから。

『乱道様が秘密だと言うことは、即ち話したくないと言うこと。これ以上の質問はお断りします』

 我路は日本刀を、爺さん達に突き付けたまま、妖艶に微笑む。
 …………我路のやつ、怖くて色っぽいじゃねーか。

「って事でだ、もう良いか?」

 じゃっと、右手を上げ受付に歩いて行こうとしたら。

「こっ……コイツは私と一緒に召喚された偽物(ポンコツ)男じゃないか!」

 おいおい……またその名で俺のことを呼ぶか?
 
 ルミ何とかが、俺を指差しデカい声で偽物と言い放った。
 その言葉に再びギルド内が騒がしくなる。

「コイツは自分で聖印を身体中に描いたバカなんだよ!」

 そう言って俺を指差しバカにしたように嘲笑うルミなんとか。
 おいおい……ルミなんとかよ? またさらに性格悪くなってないか? 
 
「聖印を自分で描いた?」
「そんな馬鹿がいるのか?」
「自分で描いた聖印で、召喚獣を召喚できるとでも思ったのか!?」
「……そんな馬鹿がいるなんて」

 ルミ何とかに釣られるように、皆が俺を見て指差し笑う。

 正直めっちゃ感じ悪い。
 言い返そうとしたら、俺より先に切れている男が居た。
 ……我路だ。
 俺の横で恐ろしい気を放っている。

『なんと……これは馬鹿の集まりですね』

 我路が髪を無造作にかき上げると、『全員排除しますか? 我が主を侮辱するなど許すまじ』っと日本刀を振り上げた。

 冒険者ギルド(ここ)が血の海になっちゃう! それは流石にまずいだろ!

「ちょ!?」

 我路の手を握り、動きを止めようとした瞬間。
 俺たちの目の前に、白い物体が現れた。

『らんどーちゃまを侮辱するなんて! 許さないでちよ!』
「うゆ!」

 稲荷を背負った琥珀が、何とも間抜けな登場で、みんなの注目を一斉に集める。

 ……琥珀よ? 気持ちはすっごく嬉しいんだがな? 
 このタイミングで、その登場の仕方はどうよ?