「……良いタイミングのご帰還で」
「おいっ! あのドラゴンは何処に行ったんだ? ドラゴンに乗っていた男達も!」

 ギルマスが俺の嫌味を無視して、一方的に質問してくる。……ったく人の話くらいちゃんと聞けっつーの。

「はぁ……っ。ドラゴンは俺が倒したよ」

 そうぶっきらぼうに言うと、ギルマスはギギギっと動きの悪い人形のように、ゆっくりと首を回し俺をみる。

「はあああああああああ!?」

「うおっ!? 急にデカい声出すなよ! 心臓に悪いだろ? ったく」

「そう言う問題じゃなくてだな! あれはAランク魔獣なんだよ! Aランク冒険者やAランク魔法師が、十人集まっても勝てるかどうかってくらいヤバイ魔獣なんだよ! 一体でだぞ? それが二体も居たんだ!」

 ギルマスが暑苦しい顔を近づけてきて、声を荒げる。
 これ以上は頼むから近寄んないで。マジ勘弁。

「それをお前一人で片付けたとか!? すんなり受け入れられる訳ねーだろ!」

「……そんなキャンキャン大声で喚かなくても聞こえてるよ!」

「乱道様。このバカにでも分かるように魔石を見せたらどうですか?」

 ギルマスと俺の間に我路が割って入ってきた。

「魔石?」

 我路の言葉に、ギルマスの眉がピクリと上がる。我路は俺を見て優しく微笑む。
 なるほどな、魔石を見せたら討伐したのも一目瞭然だな。

「ほらっ! これで納得したか?」

 俺は大きな魔石を二つギルマスに見せた。

「…………!! これはっ……ゴクッ」

 ワイバーンの魔石を見てギルマスが生唾を飲み込む。

「こんなに大きな魔石……長年ギルマスをやっているが初めて見た。ワイバーンの魔石の中でも極上最高レベル……ゴクッ」
 
 ギルマスが目を見開き、瞬きするのも忘れ驚いている。

「ってことで理解してもらえた?」
「…………ぐぬぬ。せざるをえない」
『乱道様良かったですね』
 会話を静かに聞いていた我路が、そう言ってニコリっと微笑む。

 時間がかかったが、やっと理解して貰えた。
 これで、冒険者証(身分証)を作って貰える。

「じゃあ俺の事は、魔力なしではないって事も、理解してもらえたな? 身分証を作ってくれよ?」
「……もちろん分かっている。だが今日は、いきなり現れた魔獣の処理もあるし、明日ちゃんと発行しよう」

 ギルマスがそう言うと、他の奴らのところへと歩いて行く。
 
 はぁ……長い1日だったぜ。俺は大きなため息を吐いた後、両手を伸ばした。


★★★




 城下町イスカンダルにある、冒険者ギルドにみんなで戻ってくると、サラサが俺に向かって慌てて走ってきた。

「乱道様! お疲れ様です。魔獣討伐は大丈夫でしたか?」

 サラサが心配げに聞いてくる。
 まぁもちろん何もなかったので、大丈夫だとサラサを安心させる。
 俺のどんでもないヤラかしの事は触れずに、どうだったかサラサに話す。

「なぁサラサ? この街にある宿屋で、調理器具が部屋にある所か、調理場所を貸してくれる宿屋を知らねーか?」
 我路が料理を作ってくれると言っていたからな。ドラゴンの味も気になるし……

「……それなら。【六花亭】がオススメですね。このギルドを出て右に真っ過ぐに歩いて行くとあります」
「そうか。ありがとな、早速行って見るよ」

 早速サラサが教えてくれた六花亭を目指して歩いていく。

「これはなんて豪華な」

 六花亭は俺の想像を遥かに超え、豪華な宿屋だった。
 イメージは高級な旅館って感じだな。
 だがその見た目に反して、宿泊代金は意外と安くて驚いた。

「ふぅ~疲れたな」
『乱道様は少し寛いで居てくださいね。チャチャっと料理をお作りしますので』

 我路が部屋に備え付けられた調理場に立ち微笑む。
 その姿は何ともカッコイイ。
 何をやっても絵になるとか、イケおじめ! ずるい。

 などど一人考えていたら……急に体に衝撃が!

「あが!? かっ体が!?」

 俺はあまりの痛さと怠さに、床に倒れ込んだ。

『らんどーちゃま!? どうしたでち!?」
「らんちゃ!?」