サタンに名前……?
 このサタンのタトゥーは、初めてトライバルタトゥーに挑戦したんだよな。懐かしいな。

 サタンをどうアレンジして、トライバル模様を作ろうか悩んだよな。
 カッコ良くしようかとか、流行りっぽいのを入れようか、民族っぽいのにしようかっと悩んだなぁ。
 結局、我が道を突き進み閃きで作ったんだっけ。
 ……我が道? ……(みち)……我路(わがみち)
 我路(ガロ)……おおっ。我路か! ……いいな。決めた。

「サタン。お前の名前は【我路(ガロ)】だ」

 そう言うと、琥珀の時と同じように腕が輝き……!?

『我が(あるじ)乱道様。私に素敵な名前を与えてくださりありがとうございます』

「へ?」

 目の前には、長めの白髪を後ろで緩く縛った、赤い目の紳士が立っていた。
 その姿は真っ黒な着流しを羽織り、右手には日本刀を握りしめている。
 ハッキリ言って、男の俺が見てもカッコイイ。

「お前がサタン?」
「はい。今は我路でございます」

 そう言って白髪の紳士は綺麗にお辞儀する。

 サタンのキャラと違いすぎねーか!?
 何だよこのイケてるおじ様は!? 
 俺はもっと違うのを想像していたぞ!? よくある悪魔っぽいやつな?
 カッコよくて紳士とかズルすぎねーか?

『なんでしょう?』

 俺がジッと見ると、我路はニコリと優しく微笑む。
 うん、俺が女ならイチコロだな。

 琥珀の力はタトゥーだった。なら我路の力は?
 
「……それで我路、お前の力は何なんだ?」

『私の力は剣舞です。乱道様の右腕となりましょう。後はそうですね? 乱道様の身の回りのお世話などもお任せください』

 イヤイヤどうせなら、身の回りのお世話は、メイド姿の綺麗なおねーさんを召喚したい。
 などと考えていたら、我路の表情が険しくなる。

『乱道様? どうやらユックリしていられないようですね?』

 そう言って何もない空を見上げる。

 ユックリ出来ない? 何が言いたいんだ?
 緑色の気持ち悪い魔物は全て消え去ったし……他に何が……?

 なんて考えていたら。

「なっ!?」

 稲荷と初めて出会ったような振動が!? 空気が震えている!

「これは!?」
 
 次の瞬間。
 時空が歪み、目の前に大きなドラゴンが二匹現れた。
 その上には武装した男が乗っている。
 
「がうううっ!」

 稲荷が身を乗り出し男に吠える。

「稲荷?」

 コイツら突然現れたぞ!? 
 さっきまで何も居なかったのに、まるで何処かから転移してきたような……。

 ギルマスや冒険者たちは、この大きなドラゴンに驚き、急いで逃げて行く。
 俺に討伐勝負だと、偉そうに言っていたクルトンの野郎は、真っ先に走って逃げていた。
 あの野郎め。逃げ足が一番じゃねーか。

『乱道様、ここは私の力を使いますか?』
「我路の力?」
『はい。私の力を使えば、身体強化や剣術が使えるようになります。こんな奴ら瞬殺です』

 身体強化に剣術? どっちも俺には無縁な感じだが、瞬殺だって!? かっこいいじゃねーか。

 我路と話していたら、ドラゴンに乗っていた男が急に飛び降り、俺の前に立つ。

「おおっ! 九尾の狐! 早速見つけることが出来るなんて! ラッキーだな」

「はっ?」

 男はそう言って、俺の腕に抱いている稲荷を見て、ニヤついている。

 この男は稲荷を知っているのか?
 何で?

「がううううっ!」

 稲荷は男に向かって牙を出し吠える。

 この男と稲荷……どんな繋がりがあるんだ?