一番隊の先頭を、ギルマスがみんなを引き連れ歩く。
 性格に難ありだと思うが、一応Aランク冒険者らしい。

 その隣を筋骨隆々の男達三人が、偉そうに闊歩している。
 このメンバーで、冒険者チームというのを組んでいたらしい。
 今はソロでそれぞれ活躍していると、聞いてもいないのに、大声で自慢しながら歩いていた。
 そんなに凄いんなら、全てギルマスにお任せしますよ。

「うゆう!」
 稲荷が俺の肩に乗り、森をキョロキョロ見ている。
 この森が懐かしいのか?

「稲荷? なんかあったら俺から離れんなよ?」
「うぃ!」

 稲荷がにちゃあっと笑う。……ったく言ったこと、ちゃんと理解してんのか?
 本当はギルドで留守番して欲しかったんだが、稲荷が俺から絶対に離れなかったので、仕方なく連れてきた。
 まぁ本来の姿に戻れば、天災級の九尾の狐だからな。
 全く心配ないんだが、今の姿は小さな幼子だから、ついつい心配してしまう。

「いたぞ!!」

 稲荷を撫でていたら、前を歩くギルマスが、急に声を荒げる。
 魔獣の登場か?

 急いでギルマスがいる所まで走っていくと……!
 緑色した人型の魔物が、こっちに向かって気持ち悪い笑みを浮かべながら、ユックリと歩いて来ていた。

 何匹居るんだ!? 目視できるだけでも二十は優に超えている。

 正直言って気持ち悪りぃ集団。
 体長だって余裕で二メートルを超えている。
 今からこんな奴らと戦うのか?

「オークにあれは……オークジェネラル!?」
「ちょっと待て!? キングも居るぞ!」

 緑色の魔獣はオークと言う魔物らしい。
 服を着ている奴や、頭に王冠を被っている奴がどうやら強いみたいだな。

 鑑定してみると、王冠を被っている奴が、オークキングで一番強いな。
 って言ってもキングでAか。
 まぁ……そのレベルなら大丈夫か?

 ギルマスが「オークキングは俺たちが討伐するから、お前達はオークとオークジェネラルを頼む」そう言って仲間の男達を連れオークキングへと向かっていった。

「おい? どっちが多くオークを倒せるか、今から勝負だからな?」
「はぁ?」

 この緊迫した状況下の中、クルトンが討伐勝負だと言ってきた。
 おいおい……あれって本気だったのかよ。
 こんな状況下の中、よく勝負とか言えるぜ。

「はぁ……リョウカイッス」
「ククク……まぁ討伐経験のない君には、一匹討伐するのも苦戦するだろうがね」

 クルトンはそう言うと、魔獣に向かって走っていった。

 さて俺も魔獣討伐しますかね。

 確か……魔法について書いている本あったよな。

 アイテムボックスから、魔導書と書いている本を取り出した。
 おおっスゲエ。魔法名がいっぱい書いてある。
 折角だし、次は使った事のない魔法を使うか……。

 何にしようかな。

 炎と雷は使ったから次は……よしっ。風魔法にしよう!

 クルトンの奴が、討伐数勝負とか言ってたからな。
 どうせなら、一度に多く倒せる魔法がいいよな。
 俺は魔導書を捲りながら、広範囲魔法を選ぶ。
 
 ふぅん……テンペストか。

【広範囲魔法、一瞬で粉微塵になるSランク魔法】

 俺って確か……Sランク魔法まで使えるんだよな。
 Sランク魔法って、どのレベルなんだろう?

 ……ちょっと試してみるか。

 この時。
 こんな事を考えなければ良かったと、後に俺は酷く後悔する事になるんだが、この時の俺はそんな事知る由もなく。


 《テンペスト》



 厄災級の魔法を放つのだった。