俺は文也、個人のファッションデザイナーをしている。俺には少し変わった家族がいる。
「ただいま、文也。」
「おかえり、健人。早かったな。」
俺のパートナー(多分、妻)の健人。妖人で、男性でありながら子宮を持つフェアリーである。地球で芸能活動しながら、妖では魔法総督局に所属している。どちらも忙しいというのに、疲れた顔ひとつ見せない超人だ。
「おかえりなさい!お父さん!」
「ただいま、陽葵。」
長女、陽葵。健人譲りの音楽センスを武器に、アイドルグループでセンターをしている。健人曰く、魔法は苦手そうだがそこらのモブよりずっと強い、とのこと。
「ちょっと待ってて!今、六華と夕食作ってるから!」
「それは楽しみだな。」
次女、六華。大人びた容姿を使いこなし、ファッションモデルをやってる中学生。さっぱりしていてクールだが、結構甘えん坊。魔法の才能はピカイチで、歳に見合わぬ強さを持つ(らしい)。
至って普通の家族だ。だがそれももうしばらく見ていない。
健人が妖の仕事で遠征に行ってしまった。予定では一ヶ月と言っていたのにも関わらず、もう二ヶ月になろうとしている。
「お父さん……帰ってこないね……」
「だな。」
「心配……怪我してないかな……大丈夫……かな……」
「ママのことでしょ?大丈夫よ……きっと。」
きっと一番辛いのは六華だ。彼女は根っからのママっ子だ。いくら大人びていようと、中学生。大好きなママに会えないだけ、相当ストレスだろう。
俺の携帯に着信が来る。相手は舞人<まいと>、健人の父親だ。
そういえば以前もこんなことがあった。昔健人が戦闘に出た時、仲間を庇い攻撃を受け殉職した、と彼から電話を受けた。その後、蘇生術で健人は復活したが……
嫌な思い出がぶり返し、怖くて電話に出れない。一度切れてしまったが、数分後また電話が来る。
「もしもし……」
恐る恐る電話に出る。
『もしもし、文也で間違いないか?』
「はい……どうかしましたか?」
平静を装っていたつもりだが、手汗が止まらないあたり動揺している。
『健人が、…………』
「っ……!!」
俺は思いっ切り、家を飛び出した。
「ちょっ、お父さん?!」
「っ!待って、私も行く!」
後ろから娘たちが付いてくる。
転送魔法にて、妖・魔法総督局。エントランスに舞人が立っていた。
「陽葵と六華も来」
「ママは無事なの?!早く会わせて!」
六華が舞人に飛びつく。今までのストレスが爆発して、感情をコントロールできていない。
「……??六華か?どうしてここに?」
「へ、……?」
舞人の後ろから声がした。爽やかな海風のような声だ。鮮やかなコバルトブルーの髪が見える。紛うことなき健人だ。
「ママ……ママ、!ママ!!」
六華は一目散に駆け寄り抱きついた。健人の胸に顔をうずめ、彼のシャツを濡らす。
「文也も陽葵も、なんでここに?」
「舞人さんから電話が来て、『仕事に夢中で帰ろうとしないから、連れ帰ってくれ』ってさ。」
「そうだったのか。」
どうやら今回の遠征で、健人は怪我しなかったものの、負傷者が多くその救護や代行を休みなくしていたらしい。どおりで帰ってこないわけだ。
「六華、一回離れよう。もう三日も四日も風呂に入ってないから、臭いだろう?」
「…………嫌だ……今、ママを噛み締めてるの……怖かったの……」
健人は根負けして、優しく六華の頭を撫でた。
「…………温かい。」
「そうか。」
俺は手を伸ばした。
「帰ろう?」
「……あぁ。」
手を取るやいなや、健人は俺にキスした。
「ふぅ……」
「スッキリしたか?」
「あぁ、やっぱり風呂はいいな。」
髭を剃って、体も頭も綺麗さっぱり洗ってきたようだ。
「私何気に髭あるお父さん初めて見たかも!」
「確かに……珍しくて、写真撮った……!」
「え!ちょうだい!ダンディお父さんw」
「やめてくれ……」
六華も陽葵も先程の不安は飛んでいき、明るさを取り戻した。
「健人、髪乾かしてやる。」
「ありがとう、文也。」
娘たちが風呂に入っている間に、夫婦水入らずの話をした。俺がソファーに座り、俺の足の間で胡座をかく健人。
「髪長くなってきたな。切るか?」
「んー……まだ切らないつもりなんだ。」
「なんで?」
「今度着る文也の服は髪が長い方が似合うと思って。ウルフにしようと思うんだが、どうだろうか?」
「ははっ!いいじゃねぇか。」
結局健人は仕事人でいつもモデルだの妖だの考えてる。そんな健人が俺は好きだ。
「ただこまめに帰ってきてくれ?」
「すまない……随分心配をかけたみたいだな。」
「まぁな。でも怪我してないだけ良かったわ。」
健人の誕生日に奮発して買ったマイナスイオンドライヤーで髪を乾かす。どれだけサラサラに乾かせるか、最近の趣味になってきている。
「ほら、終わったぞ。」
「ありがとう。文也が乾かすといつもサラサラだな。」
時々見せるか弱い姫のような柔らかい笑みがすごく落ち着く。出会った頃はお互い警戒心剥き出しで喧嘩ばかりしていたが、今ではそんなことない。
「ぱぱぁ、髪乾かしてぇ……!」
「おぅ。おいで、陽葵。」
「むっ……パパは今お父さんのだからダメだ。」
「いいでしょぉ?さっきまでイチャイチャしてたじゃん!」
パパの取り合いが見れるのも、案外嫌じゃない。あぁ、平和……ずっと続けばいいのに。
「ただいま、文也。」
「おかえり、健人。早かったな。」
俺のパートナー(多分、妻)の健人。妖人で、男性でありながら子宮を持つフェアリーである。地球で芸能活動しながら、妖では魔法総督局に所属している。どちらも忙しいというのに、疲れた顔ひとつ見せない超人だ。
「おかえりなさい!お父さん!」
「ただいま、陽葵。」
長女、陽葵。健人譲りの音楽センスを武器に、アイドルグループでセンターをしている。健人曰く、魔法は苦手そうだがそこらのモブよりずっと強い、とのこと。
「ちょっと待ってて!今、六華と夕食作ってるから!」
「それは楽しみだな。」
次女、六華。大人びた容姿を使いこなし、ファッションモデルをやってる中学生。さっぱりしていてクールだが、結構甘えん坊。魔法の才能はピカイチで、歳に見合わぬ強さを持つ(らしい)。
至って普通の家族だ。だがそれももうしばらく見ていない。
健人が妖の仕事で遠征に行ってしまった。予定では一ヶ月と言っていたのにも関わらず、もう二ヶ月になろうとしている。
「お父さん……帰ってこないね……」
「だな。」
「心配……怪我してないかな……大丈夫……かな……」
「ママのことでしょ?大丈夫よ……きっと。」
きっと一番辛いのは六華だ。彼女は根っからのママっ子だ。いくら大人びていようと、中学生。大好きなママに会えないだけ、相当ストレスだろう。
俺の携帯に着信が来る。相手は舞人<まいと>、健人の父親だ。
そういえば以前もこんなことがあった。昔健人が戦闘に出た時、仲間を庇い攻撃を受け殉職した、と彼から電話を受けた。その後、蘇生術で健人は復活したが……
嫌な思い出がぶり返し、怖くて電話に出れない。一度切れてしまったが、数分後また電話が来る。
「もしもし……」
恐る恐る電話に出る。
『もしもし、文也で間違いないか?』
「はい……どうかしましたか?」
平静を装っていたつもりだが、手汗が止まらないあたり動揺している。
『健人が、…………』
「っ……!!」
俺は思いっ切り、家を飛び出した。
「ちょっ、お父さん?!」
「っ!待って、私も行く!」
後ろから娘たちが付いてくる。
転送魔法にて、妖・魔法総督局。エントランスに舞人が立っていた。
「陽葵と六華も来」
「ママは無事なの?!早く会わせて!」
六華が舞人に飛びつく。今までのストレスが爆発して、感情をコントロールできていない。
「……??六華か?どうしてここに?」
「へ、……?」
舞人の後ろから声がした。爽やかな海風のような声だ。鮮やかなコバルトブルーの髪が見える。紛うことなき健人だ。
「ママ……ママ、!ママ!!」
六華は一目散に駆け寄り抱きついた。健人の胸に顔をうずめ、彼のシャツを濡らす。
「文也も陽葵も、なんでここに?」
「舞人さんから電話が来て、『仕事に夢中で帰ろうとしないから、連れ帰ってくれ』ってさ。」
「そうだったのか。」
どうやら今回の遠征で、健人は怪我しなかったものの、負傷者が多くその救護や代行を休みなくしていたらしい。どおりで帰ってこないわけだ。
「六華、一回離れよう。もう三日も四日も風呂に入ってないから、臭いだろう?」
「…………嫌だ……今、ママを噛み締めてるの……怖かったの……」
健人は根負けして、優しく六華の頭を撫でた。
「…………温かい。」
「そうか。」
俺は手を伸ばした。
「帰ろう?」
「……あぁ。」
手を取るやいなや、健人は俺にキスした。
「ふぅ……」
「スッキリしたか?」
「あぁ、やっぱり風呂はいいな。」
髭を剃って、体も頭も綺麗さっぱり洗ってきたようだ。
「私何気に髭あるお父さん初めて見たかも!」
「確かに……珍しくて、写真撮った……!」
「え!ちょうだい!ダンディお父さんw」
「やめてくれ……」
六華も陽葵も先程の不安は飛んでいき、明るさを取り戻した。
「健人、髪乾かしてやる。」
「ありがとう、文也。」
娘たちが風呂に入っている間に、夫婦水入らずの話をした。俺がソファーに座り、俺の足の間で胡座をかく健人。
「髪長くなってきたな。切るか?」
「んー……まだ切らないつもりなんだ。」
「なんで?」
「今度着る文也の服は髪が長い方が似合うと思って。ウルフにしようと思うんだが、どうだろうか?」
「ははっ!いいじゃねぇか。」
結局健人は仕事人でいつもモデルだの妖だの考えてる。そんな健人が俺は好きだ。
「ただこまめに帰ってきてくれ?」
「すまない……随分心配をかけたみたいだな。」
「まぁな。でも怪我してないだけ良かったわ。」
健人の誕生日に奮発して買ったマイナスイオンドライヤーで髪を乾かす。どれだけサラサラに乾かせるか、最近の趣味になってきている。
「ほら、終わったぞ。」
「ありがとう。文也が乾かすといつもサラサラだな。」
時々見せるか弱い姫のような柔らかい笑みがすごく落ち着く。出会った頃はお互い警戒心剥き出しで喧嘩ばかりしていたが、今ではそんなことない。
「ぱぱぁ、髪乾かしてぇ……!」
「おぅ。おいで、陽葵。」
「むっ……パパは今お父さんのだからダメだ。」
「いいでしょぉ?さっきまでイチャイチャしてたじゃん!」
パパの取り合いが見れるのも、案外嫌じゃない。あぁ、平和……ずっと続けばいいのに。