「こっち!こっちだよ、海琴くん!」
「薺……!ちょっ、待って!」
よく晴れたある日の原っぱで、海琴は初めて走った。一九歳の彼にとって念願である。
地球との平行世界・妖に存在する不治の病をご存知だろうか。その名も「魔力性筋萎縮硬化症」魔力が全身の筋肉を纏わり付いて硬くなり、全身が動かなくなりそのまま亡くなる。魔法が全てであるこの世界で致命的であるにもかかわらず、未だ確たる治療法はない。
海琴もその一人だった、つい先日まで。歴史が変わったのは今から三週間ほど前である。命わずかな海琴のもとに、名医・桜子の弟子・リンがやってきた。リンは昔、同じ病の友人を治療した経験があったのだ。惜しくもその友人は完治せず、半年後に亡くなってしまったが、それが海琴への治療に繋がった。幾度の手術の後、世界初の完治へと漕ぎ着けたのである。
「海琴くん!早く!」
「待って……!はぁ……はぁ……あはは……!」
海琴は子供らしく無邪気に笑った。
「走るのって……結構疲れるけど……楽しいね、薺……!」
「んふふっ!でしょう?ほら、もうちょっとだよ!」
幼なじみである薺にしばらく片思いしているが、一度としてその気持ちを伝えたことは無い。それは海琴自身が死を受け入れていた証拠である。
「ほら着いたよ!」
着いたのは春の花が満開に咲き誇る花畑だった。
「っ……!?ここって……」
「私達が初めて会った場所。覚えてる?もう一〇年も前なんだって。」
「そっか。もう一〇年も経つんだね。まぁそうか、ついこの前久しぶり会ったんだから。」
それ以外に、薺と海琴は二度ほど幼い頃に会ってから一〇年も会えていなかったことも相まったのだろう。
「感動の再会の後すぐ、死ぬかもなんて、本当にドキドキしちゃったぁ。でも、良かった……」
花畑の中で薺は花の精霊の如く柔らかい笑顔を見せた。それは昔から変わらない笑みだった。
「っ……!!…………薺、」
「んぅ?どうしたの、海琴くん?」
薺の手を取り、自分の胸へと誘う。ドクドクと心臓の音が薺に伝わる。
「わぁ……!うふふっ!生きてるってやっぱり嬉しいね。」
「……うん。君にも会えるし、恋だってできる。」
「えっ……///!」
鼓動が速くなっていく。
「海琴くん……?」
「……薺が好きだ……ずっと好きだった。一目惚れして……それから……ずっと」
「……ぅっ……ぅぅっ……!」
告白してみれば薺が泣いているではないか。
「えっ、そ、泣くほど嫌だった……?」
「違う……違うよ……すごくすごく……嬉しいの……!一〇年間ずっと会いたいって思ってた……!大好きなんだもの……!なのに……再会できたら……海琴くん……」
「っ!ごめん、薺。僕はもう大丈夫だよ。」
「……ぅっ……ぅぅっ……うぁぁぁんっ……!」
泣きじゃくる薺を一回りも二回りも大きな身体で抱きしめる。
「泣かないで……薺。」
そっと雫を拭ってあげると、またいっぱい涙を溜める。海琴は薺の前で跪いた。
「結婚を前提にお付き合いしていただけませんか?」
「っ……///!はい!よろしくお願いします///!」
海琴は薺を高く抱き上げ、クルッと一周してみせた。
「薺……!ちょっ、待って!」
よく晴れたある日の原っぱで、海琴は初めて走った。一九歳の彼にとって念願である。
地球との平行世界・妖に存在する不治の病をご存知だろうか。その名も「魔力性筋萎縮硬化症」魔力が全身の筋肉を纏わり付いて硬くなり、全身が動かなくなりそのまま亡くなる。魔法が全てであるこの世界で致命的であるにもかかわらず、未だ確たる治療法はない。
海琴もその一人だった、つい先日まで。歴史が変わったのは今から三週間ほど前である。命わずかな海琴のもとに、名医・桜子の弟子・リンがやってきた。リンは昔、同じ病の友人を治療した経験があったのだ。惜しくもその友人は完治せず、半年後に亡くなってしまったが、それが海琴への治療に繋がった。幾度の手術の後、世界初の完治へと漕ぎ着けたのである。
「海琴くん!早く!」
「待って……!はぁ……はぁ……あはは……!」
海琴は子供らしく無邪気に笑った。
「走るのって……結構疲れるけど……楽しいね、薺……!」
「んふふっ!でしょう?ほら、もうちょっとだよ!」
幼なじみである薺にしばらく片思いしているが、一度としてその気持ちを伝えたことは無い。それは海琴自身が死を受け入れていた証拠である。
「ほら着いたよ!」
着いたのは春の花が満開に咲き誇る花畑だった。
「っ……!?ここって……」
「私達が初めて会った場所。覚えてる?もう一〇年も前なんだって。」
「そっか。もう一〇年も経つんだね。まぁそうか、ついこの前久しぶり会ったんだから。」
それ以外に、薺と海琴は二度ほど幼い頃に会ってから一〇年も会えていなかったことも相まったのだろう。
「感動の再会の後すぐ、死ぬかもなんて、本当にドキドキしちゃったぁ。でも、良かった……」
花畑の中で薺は花の精霊の如く柔らかい笑顔を見せた。それは昔から変わらない笑みだった。
「っ……!!…………薺、」
「んぅ?どうしたの、海琴くん?」
薺の手を取り、自分の胸へと誘う。ドクドクと心臓の音が薺に伝わる。
「わぁ……!うふふっ!生きてるってやっぱり嬉しいね。」
「……うん。君にも会えるし、恋だってできる。」
「えっ……///!」
鼓動が速くなっていく。
「海琴くん……?」
「……薺が好きだ……ずっと好きだった。一目惚れして……それから……ずっと」
「……ぅっ……ぅぅっ……!」
告白してみれば薺が泣いているではないか。
「えっ、そ、泣くほど嫌だった……?」
「違う……違うよ……すごくすごく……嬉しいの……!一〇年間ずっと会いたいって思ってた……!大好きなんだもの……!なのに……再会できたら……海琴くん……」
「っ!ごめん、薺。僕はもう大丈夫だよ。」
「……ぅっ……ぅぅっ……うぁぁぁんっ……!」
泣きじゃくる薺を一回りも二回りも大きな身体で抱きしめる。
「泣かないで……薺。」
そっと雫を拭ってあげると、またいっぱい涙を溜める。海琴は薺の前で跪いた。
「結婚を前提にお付き合いしていただけませんか?」
「っ……///!はい!よろしくお願いします///!」
海琴は薺を高く抱き上げ、クルッと一周してみせた。