6年付き合ってた、そして2年同棲してた彼女に浮気され、1週間前に別れた。
勿体ないことをしたと思ったときにはもう遅かった。遅くなると連絡したものの定時で帰れたと思えば、寝室でお盛んな2人を発見。元はといえば俺の家なのに好き勝手やりやがって……キレた俺は有無も言わせず家から追い出した。ひたすら弁解という名の言い訳を並べる女を相手に「地獄に堕ちろ、じゃあな」とだけ送り、ブロック&着信拒否。写真もプレゼントも全部捨てて、引っ越し費用を貯めるために奮闘中である。
(最悪だ……)
俺だって今年で28歳。正直、彼女……否、元カノとは結婚まで考えてて、指輪も作る寸前だった。危なかった。
まぁ、惜しいことをしたが、ある意味であの女の本性が分かってよかったのかもしれない。
「なぁ、老田。今日から新人来るって話、聞いた?」
老田というのは、俺のこと。話しかけてきたのは同期の中野だ。
「そりゃな。俺が教育係になっちまった。」
「頑張れよ、老田主任。」
「へいへい。」
こんなやる気がなさそうな俺でも、28歳で主任という出世街道を走っている。一応大学を出ていて、会社の成績もトップだ。ある意味、惜しいことをしたのは元カノのほうだ。と思いたい……
「え〜、皆少し聞いてくれ。」
課長の声がかかった。隣には25歳前後の女性が立っていた。綺麗な女性だった。確か名前は……
「おはようございます。若林華恋と申します。これからよろしくお願いします。」
そうだ。若林華恋だ……ん?若林……か…こ……?!
「華恋くんの教育係は、老田主任だ。」
「お、老田未蕾です……」
今気づいてしまった……なんで忘れてたのか……
「老田……未蕾って……!お、老田くん!?」
「若林さん……お久しぶりです。」
若林華恋、28歳。俺と同じ高校出身で、俺の初恋の相手……だが、若林さんは学年のマドンナだったので、到底釣り合うはずもなく、ただの片思いで終わってしまった。
休憩中、青い春を思い出しながら缶コーヒーを買った。カチャとなるプルタブが若やぐ。苦いブラックコーヒーが俺にはちょうどいい。若い思い出と一緒に飲み込む。
「老田く、主任!」
「ん?若林さん、別に老田くんで良いですよ。で、何ですか?」
「あ、えっとね……!」
分からないことがあったようで、俺に聞いていた。あぁ……やっぱり若林さんは可愛い。桃色味のある茶髪に、透き通った桜色の瞳。
高校では……いや今でも注目の的である乙女……初めて会ったときは、妖精か何かだと勘違いしたほどだ。3年間同じ図書委員をしてともに時間を過ごした。確か、彼女は部活も文芸部に入っていて、朝も放課後の本を読んでいた。その横顔が、時々セリフを言霊にする声が、俺の心を奪った。
「老田くん?聞いてる?」
「あぁ、聞いてますよ。っ……!」
顔を覗き込む顔が近い。ふと顔を赤くしてしまった。
「顔赤いよ?熱でもある?」
「だだだだ大丈夫です!!」
つい数時間前まで消したい思い出だった。苦い青春だった。のに……少しばかり掘り返しても良いかもしれない。もうあの頃のような、意気地なしの男じゃない。
「あ、あの……!仕事終わったら、再会の記念に飲みに行きませんか!?」
過去一、度胸のある男だった。華恋はキョトン顔のあと、ふふふっ!と軽い笑みを浮かべた。軽く握った拳を口の前に持ってきて、少し前かがみで笑う。あの頃から彼女は変わってない。
「いいよ。でも、宅飲みがいいなぁ。」
「え、?」
「早く仕事終わらせなくちゃね。私の家で宅飲み決定!」
彼女の少し強引で、でもそのリーダー性にいつも引っ張られる。これではどっちが上司か分からない。軽く鼻から息を抜くように笑った。
「分かりました。とっとと片付けてコンビニ行きますか。」
「やったぁ。………………相変わらずかっこいいなぁ……」
「ん、?なんか言いました?」
「なんもぉ?」
元上司からパワハラ、同期や先輩からセクハラを受け、転職した。そんな私にも高校からずっと好きな人がいる。その人との宅飲みで、炭酸缶のプルタブが若やぐのだった。
『部活お疲れ様、老田くん。あんなスパイクができるなんて、バレー上手なんだね!』
『長くやってるだけだよ。特別上手なわけじゃない。』
『そうなのかな……?あ、!はい、差し入れのコーラです。好きなんでしょう?』
『あ、ありがとう……///うん……好き……』
『わ、私も!好きなんだ……!』
君のことが……
勿体ないことをしたと思ったときにはもう遅かった。遅くなると連絡したものの定時で帰れたと思えば、寝室でお盛んな2人を発見。元はといえば俺の家なのに好き勝手やりやがって……キレた俺は有無も言わせず家から追い出した。ひたすら弁解という名の言い訳を並べる女を相手に「地獄に堕ちろ、じゃあな」とだけ送り、ブロック&着信拒否。写真もプレゼントも全部捨てて、引っ越し費用を貯めるために奮闘中である。
(最悪だ……)
俺だって今年で28歳。正直、彼女……否、元カノとは結婚まで考えてて、指輪も作る寸前だった。危なかった。
まぁ、惜しいことをしたが、ある意味であの女の本性が分かってよかったのかもしれない。
「なぁ、老田。今日から新人来るって話、聞いた?」
老田というのは、俺のこと。話しかけてきたのは同期の中野だ。
「そりゃな。俺が教育係になっちまった。」
「頑張れよ、老田主任。」
「へいへい。」
こんなやる気がなさそうな俺でも、28歳で主任という出世街道を走っている。一応大学を出ていて、会社の成績もトップだ。ある意味、惜しいことをしたのは元カノのほうだ。と思いたい……
「え〜、皆少し聞いてくれ。」
課長の声がかかった。隣には25歳前後の女性が立っていた。綺麗な女性だった。確か名前は……
「おはようございます。若林華恋と申します。これからよろしくお願いします。」
そうだ。若林華恋だ……ん?若林……か…こ……?!
「華恋くんの教育係は、老田主任だ。」
「お、老田未蕾です……」
今気づいてしまった……なんで忘れてたのか……
「老田……未蕾って……!お、老田くん!?」
「若林さん……お久しぶりです。」
若林華恋、28歳。俺と同じ高校出身で、俺の初恋の相手……だが、若林さんは学年のマドンナだったので、到底釣り合うはずもなく、ただの片思いで終わってしまった。
休憩中、青い春を思い出しながら缶コーヒーを買った。カチャとなるプルタブが若やぐ。苦いブラックコーヒーが俺にはちょうどいい。若い思い出と一緒に飲み込む。
「老田く、主任!」
「ん?若林さん、別に老田くんで良いですよ。で、何ですか?」
「あ、えっとね……!」
分からないことがあったようで、俺に聞いていた。あぁ……やっぱり若林さんは可愛い。桃色味のある茶髪に、透き通った桜色の瞳。
高校では……いや今でも注目の的である乙女……初めて会ったときは、妖精か何かだと勘違いしたほどだ。3年間同じ図書委員をしてともに時間を過ごした。確か、彼女は部活も文芸部に入っていて、朝も放課後の本を読んでいた。その横顔が、時々セリフを言霊にする声が、俺の心を奪った。
「老田くん?聞いてる?」
「あぁ、聞いてますよ。っ……!」
顔を覗き込む顔が近い。ふと顔を赤くしてしまった。
「顔赤いよ?熱でもある?」
「だだだだ大丈夫です!!」
つい数時間前まで消したい思い出だった。苦い青春だった。のに……少しばかり掘り返しても良いかもしれない。もうあの頃のような、意気地なしの男じゃない。
「あ、あの……!仕事終わったら、再会の記念に飲みに行きませんか!?」
過去一、度胸のある男だった。華恋はキョトン顔のあと、ふふふっ!と軽い笑みを浮かべた。軽く握った拳を口の前に持ってきて、少し前かがみで笑う。あの頃から彼女は変わってない。
「いいよ。でも、宅飲みがいいなぁ。」
「え、?」
「早く仕事終わらせなくちゃね。私の家で宅飲み決定!」
彼女の少し強引で、でもそのリーダー性にいつも引っ張られる。これではどっちが上司か分からない。軽く鼻から息を抜くように笑った。
「分かりました。とっとと片付けてコンビニ行きますか。」
「やったぁ。………………相変わらずかっこいいなぁ……」
「ん、?なんか言いました?」
「なんもぉ?」
元上司からパワハラ、同期や先輩からセクハラを受け、転職した。そんな私にも高校からずっと好きな人がいる。その人との宅飲みで、炭酸缶のプルタブが若やぐのだった。
『部活お疲れ様、老田くん。あんなスパイクができるなんて、バレー上手なんだね!』
『長くやってるだけだよ。特別上手なわけじゃない。』
『そうなのかな……?あ、!はい、差し入れのコーラです。好きなんでしょう?』
『あ、ありがとう……///うん……好き……』
『わ、私も!好きなんだ……!』
君のことが……