海が太陽の光を浴びてキラキラしている。砂浜はサラサラで、ごみひとつ落ちていない。

 私たちは並んで、海を目指して砂浜を歩いている。
 「綺麗ですね。ゴミもないし」
 私は隣を歩く翔也さんに話しかける。
 「そうだね…管理されてるんだね」
 翔也さんはいつものように笑顔で返事をしてくれる。
 だけど…やっぱり変だ。どこか元気がない。
 さっきのことがまた蘇ってくる。まさか…病気じゃないよね?
 砂浜を睨みながら歩いていると、翔也さんが顔を覗き込んできた。
 「どうしたの?」
 私の異変に気づいたらしい。
 「い、いえ。別になんでもないです」
 誤魔化そうと思って慌てて顔を上げると、顔を覗き込んでいた翔也さんの頭にぶつかった。

 「痛っ!」
 「痛っ!」
 二人合わせて声を上げる。

 ………

 「っ…ぷっ、ははは、あはははははは」
 少しの沈黙の後、どちらかともなく吹き出して笑いはじめた。
 -うん。やっぱり、悩みを聞くのも彼女としての役目だよね。
 笑いながら、私はそんなことを思った。見て見ぬ振りは良くないし。聞いて何もないって嘘をつかれてしまったら悲しいけど。でも、翔也さんなら話してくれると思う。

 「翔也さん、」
 私は笑顔を作り、すっきりとした気持ちで翔也さんに話しかける。
 「ん?」
 翔也さんも笑顔で答えてくれる。
 「…あの。何か悩んでることとかありますか?なんか最近、様子がおかしいなって思って…」
 「!?」
 そう言った途端、翔也さんは目を見開いた。それからすぐに目を逸らして焦った声で
 「そ、そんなことないよ?全然元気だし、本当に。」と言って、明らかに嘘をついている顔をしてまた歩き出してしまった。

 「あ…そうなんですね」
 あまりにも綺麗に嘘をつかれたから、そう呟く他なかった。これ以上深掘りはできない。

 ショックだった。やっぱり、彼女でも踏み込んだらダメだった。だっめ、翔也さんは明らかに嘘をついている。私に隠したいことがある、私に知られたくないことがある、と言うことだ。
 「っ、」立ち止まったまま、涙が溢れそうになる。なんで嘘をつくの?私は翔也さんの力になりたいのに。私は隠し事なんてしてないのに。

 …ん?待って。
 私も隠していることがあった。
 今まで、誰に行ったことのない秘密。私の人生の核となる部分。
 もしかして、この秘密を先生に言ったら、先生も秘密を打ち明けてくれるのだろうか?
 言ってみる?もしかしたら引かれるかもしれないけど。それでも私は、翔也さんの力になりたい。

 「あのっ、じゃあ私の秘密を教えるので。だから翔也さんも教えてくださいっ!力になりたいんですっ!」 
 大きな声で先に言ってしまった先生に訴える。
 だけど、振り向いてくれない。聞こえているはずなのに、振り向いてくれない。触れられたくない部分に触れてしまっただろうか。失礼な人だと呆れられたのだろうか。そんなの嫌だ。お願い、振り向いてください。呆れないで…。
 「先生っ!」
 どうにか振り向いて欲しくて、大声で呼ぶと先生が振り向いてこちらへ向かってきた。