「マッチングしたのは、鈴木翔也さん、男性です。マッサージ欄に移動しますか?」

 通知を開いてまず飛び込んできたのは、そんな規則性のある文章だった。だけど、すぐに違うものに目を奪われる。

「え、この人…」
 そう呟いた私は急いでメッセージ欄に移動して、文を打ち込んでいく。

 「こんばんははじめまして。よろしくお願いちます」

 急ぎすぎたため、読みにくいし誤字ってしまった。でもそんなことはこの際どうだっていい。
 貧乏ゆすりをしながら必死に返事を待っていると、思ったよりもはやく返事が返ってきた。

 「ショートケーキさん、初めまして。こちらこそよろしくお願いします」

 丁寧な文章。好感が持てる。
 でも、そんなことより私は一刻も早く確認しなければならないことがあるのだ。

 「ところで、翔也さんのお名前とプロフィール写真は実際のものですか?

 そう、それは名前とプロフィール写真。このマッチングアプリはどちらも自由だけど、真剣にパートナーを探している人が多いため、ほとんどが実名と実際の顔写真を乗っけているのだ。もちろん、私は偽名&どこかから拾ってきた適当なアイコンだけど。

 「そうですよ。鈴木翔也です」

 また、すぐに返事が返ってきた。

 やっぱり、実名とほんとの顔なんだ…。

 私は、このままこの人と連絡を取り合うか考えた。今ならまだ、偶然会話した人でいられる。

 ーだって、この人は……。

 五分くらい考えただろうか。結構悩んだ結果、このまま会話を続けようという結論に至った。
 返事を送る。

 「実名と実際の顔写真なんですね。私は顔映りが悪いのでどこかから持ってきたアイコンです笑」

 「そうなんですね。僕は確かに顔映りいいかも」

 「いえいえ、そんなつもりじゃないですよ。実際会ってみてもイケメンだと思います。私、免許持ってるんですけど本人確認で免許証出しても写真映り悪過ぎて見比べられますもん」

 会話が続く。

 「そうなんですか。それは悲しいですね。免許持ってらっしゃるんですか?」

 「はい、特技と言ったら車の運転ですかね」

 「え、かっこいい。僕、車運転できないんですよ。ちょっと怖くて」

 「そうなんですね。確かに、事故とか起こったらって考えると怖いですよね」

 「あ、確かにそれも怖いですね。ところで、お時間大丈夫ですか?僕は大丈夫なんですけど…」

 そのメッセージで、ふと我に帰る。恐る恐る時計を見ると、もう〇時になりかけていた。

 「ありがとうございました!楽しかったですまたお願いします!」

 急いでメッセージを送り、私はそのままお風呂場へと向かった。