あなたに出会えて、本当に良かった。

　次の人生でも、あなたに会いたいよ。






　「はあー。疲れた」
　残業代も出ないのに遅くまで残業続きな週の真ん中水曜日。しかも今日は出張だったから帰る時間がいつもよりも一時間遅くなった。
　「もう十一時じゃん。あと八時間でまた会社か…」
　そんなことを呟きながら、無意識にスマホを開く。

　「中野真女様　いつもお世話になっております。本日は…」

　開くと今日の出張先の会社からメールが来ていた。中野真女とは、私の名前。今日は出張に来てくれてありがとう的なメールらしい。
　もう遅いので明日の朝一で返事を返そうと思いながら、私は目の前にある本棚に飾ってある学生時代の写真を見つめた。

　憂鬱だなあ。毎日楽しいことなんてない。社会人三年目。慣れてきて楽しいかと思いきや新人の教育係に選ばれるし、大きな案件も任されるし、大変なことばかりだ。
　学生時代に、「今の若さは忘れない」って誓ったはずなのに、もう思い出し方も忘れてしまった。
　中学生のとき、好きな人いたよなあ、確か、優しい人だった…。
　いやいや、そんなことこと思い出している暇なんてないんだった。
　早くお風呂に入って寝なきゃ。
　だるい体をなんとか持ち上げて、洗面所へと向かう。

　ｰその時だった。

　「ピロン♪マッチングしました」

　スマホが鳴ったのは。

　マッチング？ああ、あの酔っ払うとおせっかいになっちゃう上司が、彼氏の影一つない私を心配して無理やり入れたんだっけ。忘れてた。
　でもいくらなんでも勝手にアプリ入れるのは違くない？ああ、イライラしてきた。
　突然襲ってきたイライラをぶつけるように私は勢いよくその通知をタップした。

　ｰこれから、私の人生が一変することになるとも知らずに。