「じゃあーからあげ」
「分かった!帰りにお肉買って帰るね、」
私はほっそりしていてあまり油っこいものなどを好まないタイプだが、お母さんの唐揚げは大好物だった。
それでもあまり好きじゃないから食べる時は3ヶ月に1回程度でお世辞でも多いとは言えないくらい。
それでも私が唐揚げを選んだのは自分が死ぬ時が分かっているから。
「ご馳走様でした」
丁寧にお箸を揃えて置く。
「お粗末様、お母さんそろそろ行くね!」
「分かった、行ってらっしゃい!」
お母さんが出て鍵を閉める。
私は「はー…」と息を吐く。
リビングに戻り、食器を片して今度は階段を登る。
1歩1歩丁寧に。こうして歩けることを噛み締めるかのように。
私は椅子に座り、夏休みの宿題、ではなく真っ白い紙を1枚取りだして机の上に置く。
そこにカリカリとシャーペンで書いていく。
"死ぬまでにやりたいこと"
いざこうやって書こうと思うとペンが進まないもんなんだな。
でももう動けなくなるんだったら、どんなに些細な事でも書いて、悔いのない人生にしなきゃ。
「花羽 紗南」という名前の人生は一度きりなんだから。