修学旅行から帰ってきた次の日の部活、かな先輩にお土産を渡した。
「ありがと」とだけ言われた。つい焦る気持ちで練習前に渡してしまったのは失敗だったなと後悔した。
練習が終わり帰ろうとしているところをかな先輩に呼び止められた。

「お土産のお礼になんか買ってあげるから近くのコンビニ行こ」
迷いもなく家と真逆の駅の近くまで歩いた。
小さいころからサッカーばかりであまり駅に行くこともなかったため歩く道のりは見たことないような景色だった。
そのせいもあってか時間が過ぎるのが早く感じていた。
歩き始めて数分何気ない話をしていた。

「大翔君は彼女とかいないの?」
俺は返答に困った。いると真実をいうべきなのかいないと嘘をつくべきなのか。
迷った末に「いない」と答えた。

「好きな人は?」
その問いにも「いない」と答えた。さすがによくないのではとも思った。
でも、付き合っていることはお互いの両親以外には隠しているんだし、他の人に対する対応と何ら変わらないだろう。それに好きな人がいると言ったら真子と付き合っていることがばれる可能性もある。そう自分に言い聞かせた。

「私のことは?」
不意を突かれ固まってしまった。いたずらに笑う先輩に見とれていた。
「冗談だよ」と笑う先輩を見てつい口走ってしまった。

「好きです」
かな先輩は驚きながらも「告白ってことかな?」と返してきた。
もう頭の中は先輩に染まっていた。

「もし全国大会に連れてってくれたらいいよ」
またかな先輩はいたずらに笑った。正直フラれたといっても過言ではない。
俺の高校は県内では強豪とは言われてもいつもベスト4、インターハイでは運よく決勝まで行けたが全国大会優勝候補の相手に大敗。俺が決勝で負けたことをそこまで引きずらなかったのは力の差がありすぎたからだ。
でも、0%だった確率が1%になるなら何でもやるべきだと思った。「言いましたからね」と返すとかな先輩は「そんなドラマみたいなこと起こったら付き合ってあげるよ」と笑っていた。
コンビニにつき俺はアイスを買ってもらった。そこから駅まで送り家まで帰った。
1人で歩く道で頭の中はかな先輩と付き合えるかもとうきうきしていた。
全国大会までいけたら真子と別れればいいと軽く思っていた。

家に帰ると真子が待っていた。
「いつもより遅いね、練習長かったの?」と不安がる真子に「冬の選手権が近いからね」と嘘をついた。
いっしょに真子が準備したご飯を食べながら「ひろお土産まだ渡してないの?」と俺の両親からお土産をもらっていないと聞いたのだろう。うっかりしていたのだがかな先輩へのお土産に満足して両親へのお土産を買い忘れていたのである。「あぁ、明日の朝でも渡す」とまた嘘をついた。