数か月が過ぎ修学旅行の時期になった。
修学旅行は3泊4日で九州に行くことになっていた。
自主研修の班決めでは俺と実と真子そして真子の友達の千佳の4人で回ることになった。
何事もなく、順調に進んだ。

修学旅行の2週間前の土日に東北への遠征があった。
冬の選手権前の大事な時期。そこそこの緊張を抱えながら東北に向かった。

俺は試合で活躍することができなかった。
気分転換に外を歩こうとホテルの入り口を出て少し歩いた。
そばの公園のほうから電話する人の声が聞こえた。
はっきりとは聞こえなかったが別れ話なのは分かった。

「盗み聞き?趣味悪いよ」
つい聞きなれた声に足を止めてしまい電話を終えた彼女に声をかけられた。
微笑みながら言う先輩の可愛さに言葉が詰まった。
勝手に失恋して以降は意識しないようにしてきた。
3年のかな先輩は大学への推薦試験の準備としてインターハイ後しばらく部活に来ていなかった。
そのため話す機会がなく意識さえしなければ忘れていることができた。
しかし、試験が終わり遠征のちょうど1週間前ほどからまた部活に来るようになっていた。

「今日の試合、私がいないからって練習サボってたんじゃないの?」
と言う先輩に「いや、そんなことは」という俺の言葉を遮るように

「私全国大会とか行ってみたいんだけど!テレビで美人マネージャーとして特集されないかな」
と先輩は言った。「頑張ります!」と短い返事に

「期待してるから」
と笑いながら返してくれた。「9時過ぎる前にホテル戻らないと」と一緒にホテルまで帰った。
帰り道はかな先輩の愚痴を聞いて歩いた。
エレベーターに乗り4階と5階のボタンを押した。
エレベーターの電子版の数字が4に変わろうとするところで先輩は話していた話題を変えた。

「そろそろ修学旅行だよね?お土産期待してるからね」
先輩の笑顔を見ればNoとは言えなかった。
俺は「えぇ」なんて照れ笑いしながらエレベーターを降りた。

遠征から帰ってくると家には真子がいた。
俺を見るなり「なんかいいことあったの」と言われたため「試合で活躍した」と答えた。