4月はじめ、2年生に進級し始業式が行われた。
始業式の後、同じクラスになった同じサッカー部の実がやってきた。

「またお前と同じクラスかよ~」
と笑う実に「最悪な気分だ」と冗談を返したのもつかの間、担任が席に座るよう指示しながら入ってきた。

「お前はかな先輩と同じクラスになりたかったんだろうに可哀想に」
と耳元で実が茶化し席に戻っていった。
かな先輩とは同じサッカー部に所属する先輩マネージャー。
腰まであるような長黒髪はいつもつややかで、身長は155cmくらいの美人で面倒見もよくてかなりモテる。
雰囲気もすごいクールで大人っぽいが話してみると意外と子供っぽく笑う。そのギャップもあってか俺はサッカー部でかな先輩に出会ってすぐに恋に落ちた。いまはただ仲のいい先輩と後輩程度の関係。そんな俺にはかなわぬ恋だと分かっていながらも諦められずにいる。

始業式の日は毎年サッカー部の練習は無く、遊びに行こうかとも思ったが明日からの練習に向けて疲労回復のためそのまま家に帰ることにした。
校門を出る前に「ひろ!」と呼び止められた。幼馴染の真子だった。身長は本人によると150㎝あるらしいが正直怪しい。髪の長さは肩につくかつかないか。小さいころから家が隣のため家族ぐるみで仲が良く、俺が試合に出るときはよく家族と応援に来てくれる。

「いっしょに帰ろ!」
真子は帰宅部のためサッカー部の俺と同じ時間に帰ることは少ないがこうしてたまに時間がかぶった場合は1年のころからよくいっしょに帰っていて、2年でも同じクラスになった。
実はよく「真子ちゃんは大翔のこと好きでしょ」なんていうが、俺はそう感じたこともない。実のいつもの茶化しだと受け取っている。

「ひろといっしょのクラスになれてよかった」
何の恥ずかしげもなく真子は言った。「なんでだよ」とそっけなく返す俺に「なんでも!」とニコニコといいことがあったように真子は笑った。その後、他愛もない話をしながら家まで15分くらいの帰り道を歩いた。