< リーダーへ。
事後報告になりましたが、三日前に私は正社員になりました。
店長の陰謀に加担することで、私は正社員にしてもらえたのです。
本当に申し訳ありません。
せめてものお詫びに、このメールに店長の悪巧みのすべてを書きます。
半年ほど前、店長が私に話を持ちかけてきました。
「なあ、蒔田君て。実はな、君に正社員になって欲しいねん」
「えっ、私が正社員になるのですか」
「せや。これは浜田君を辞めさせるためやねん。あいつが意地悪するから、ホール係がどんどん辞めていきよる」
リーダーは意地悪ではありません。この話には裏があると思いました。
「蒔田君が正社員になったら、浜田君の居場所がなくなるやろ。あいつはプライド高いから、悔しがって退職していくはずや」
もちろん、きっぱり断りました。
すると、店長は急に話を変えたのです。
「せやった。蒔田君は奈良から通てたな」
「はい、そうですが」
「仕事あがってからが大変やな。始発待ってから帰んの、眠いやろ」
「慣れましたから」
「正社員になったら、通勤が楽になるから奈良店に配属したるわ。そんだけやないで。俺の査定で、蒔田君の昇給とボーナスは青天井や」
思わず、言ってしまいました。
「はい。有難うございます」
そのころ、私の父が病気で退職したのです。
家には高校生の弟と中学生の妹がいます。母は体が弱くて働けません。そんなわけで、これからの生活は厳しくなりそうです。
でも、私が正社員になれば、実家の苦しい家計を何かと助けることが出来るのです。
店長は何度も念を押してきました。
「正社員の試験を受けんの、浜田君には内緒にしといてや。奈良店に勤務する予定もやで。君は本店のホール責任者になると言うことで、話を合わしといてな」
実は、莉乃ちゃんもこの計画に参加しています。
もともと、リーダーを退職させるために、店長がお店に連れてきたひとなのです。
難波を歩いていたら、店長に声をかけられたそうです。
深い付き合いになった頃、店長は莉乃ちゃんに頼みました。
「うちで働いてみんか。莉乃ちゃんをパートリーダーにしたいねん。そん次は僕と結婚な。莉乃ちゃんはそのうち『吉屋』の社長夫人やで」
この話、莉乃ちゃん本人から聞きました。
さっき、私と莉乃ちゃんは店長に呼ばれました。
店長は上機嫌でお礼を言うのです。
「君らの協力のおかげで、ついに浜田君を辞めさせたわ。せいせいしたで」
莉乃ちゃんが首をかしげました。
「リーダーのこと、莉乃は少し可哀想かなって思うの」
店長は嬉しそうに莉乃ちゃんの髪を撫でました。
「莉乃ちゃんは優しいんやな。けどなあ」
店長は溜め息をつきました。
「浜田君、思てた以上にしたたかな女やったわ。クビにされて泣くかと思たら、えらい逆切れしてんで。椅子なんか振り回されて、俺はびっくり仰天や」
お世話になったリーダーへの、せめてものお詫びです。
このメールを好きに使ってください。
あちこちに暴露してもらって結構です。
私も退職しようと考えてますから、遠慮なくやってください 〉
激しい怒りで、スマホを持つ私の手が震えている。
私は叫んだ。
「許せん、許せるわけがない」
なんて狡い男。
家族を思う愛ちゃんの弱みに付け込み、私を陥れる手伝いをさせるとは。
事後報告になりましたが、三日前に私は正社員になりました。
店長の陰謀に加担することで、私は正社員にしてもらえたのです。
本当に申し訳ありません。
せめてものお詫びに、このメールに店長の悪巧みのすべてを書きます。
半年ほど前、店長が私に話を持ちかけてきました。
「なあ、蒔田君て。実はな、君に正社員になって欲しいねん」
「えっ、私が正社員になるのですか」
「せや。これは浜田君を辞めさせるためやねん。あいつが意地悪するから、ホール係がどんどん辞めていきよる」
リーダーは意地悪ではありません。この話には裏があると思いました。
「蒔田君が正社員になったら、浜田君の居場所がなくなるやろ。あいつはプライド高いから、悔しがって退職していくはずや」
もちろん、きっぱり断りました。
すると、店長は急に話を変えたのです。
「せやった。蒔田君は奈良から通てたな」
「はい、そうですが」
「仕事あがってからが大変やな。始発待ってから帰んの、眠いやろ」
「慣れましたから」
「正社員になったら、通勤が楽になるから奈良店に配属したるわ。そんだけやないで。俺の査定で、蒔田君の昇給とボーナスは青天井や」
思わず、言ってしまいました。
「はい。有難うございます」
そのころ、私の父が病気で退職したのです。
家には高校生の弟と中学生の妹がいます。母は体が弱くて働けません。そんなわけで、これからの生活は厳しくなりそうです。
でも、私が正社員になれば、実家の苦しい家計を何かと助けることが出来るのです。
店長は何度も念を押してきました。
「正社員の試験を受けんの、浜田君には内緒にしといてや。奈良店に勤務する予定もやで。君は本店のホール責任者になると言うことで、話を合わしといてな」
実は、莉乃ちゃんもこの計画に参加しています。
もともと、リーダーを退職させるために、店長がお店に連れてきたひとなのです。
難波を歩いていたら、店長に声をかけられたそうです。
深い付き合いになった頃、店長は莉乃ちゃんに頼みました。
「うちで働いてみんか。莉乃ちゃんをパートリーダーにしたいねん。そん次は僕と結婚な。莉乃ちゃんはそのうち『吉屋』の社長夫人やで」
この話、莉乃ちゃん本人から聞きました。
さっき、私と莉乃ちゃんは店長に呼ばれました。
店長は上機嫌でお礼を言うのです。
「君らの協力のおかげで、ついに浜田君を辞めさせたわ。せいせいしたで」
莉乃ちゃんが首をかしげました。
「リーダーのこと、莉乃は少し可哀想かなって思うの」
店長は嬉しそうに莉乃ちゃんの髪を撫でました。
「莉乃ちゃんは優しいんやな。けどなあ」
店長は溜め息をつきました。
「浜田君、思てた以上にしたたかな女やったわ。クビにされて泣くかと思たら、えらい逆切れしてんで。椅子なんか振り回されて、俺はびっくり仰天や」
お世話になったリーダーへの、せめてものお詫びです。
このメールを好きに使ってください。
あちこちに暴露してもらって結構です。
私も退職しようと考えてますから、遠慮なくやってください 〉
激しい怒りで、スマホを持つ私の手が震えている。
私は叫んだ。
「許せん、許せるわけがない」
なんて狡い男。
家族を思う愛ちゃんの弱みに付け込み、私を陥れる手伝いをさせるとは。
