今日からショートカット

 帰宅した。
 朝から閉め切っていた部屋は、もわっとした空気に満ちている。その匂いにますます気分が重苦しくなってきた。
 暗い気分のままでベッドのわきにバッグを置いた。

 ベッドに座り、窓の外を虚しい思いで眺める。
 なんて悲しい十二月。
 楽しいクリスマスや正月は私には来ないのだから。

 バッグの中から元気な行進曲が聞こえてきた。
「もう、めんどくさ」
 誰だろう。私がこんな気分でいるときに、メールを送ってくるのは。
 やたらと元気な着信音も変更したくなった。いや、着信音なんて要らない。

 発信者の名前を見て、私はまごついた。
 なんと、それは愛ちゃんからのメールだったのだ。
 唸ってしまった。
「凄い性格してんやね」
 私を裏切っておきながら、堂々とメールを送ってくるのだから。
 無視しようと思ったけど、よく考えたら、これは業務報告のメールかもしれない。退職するにしても、最後まで自分に与えられた職務は完遂したいもの。私はいい加減な人間が大嫌いなのだ。
「これで最後やし」
 私は仕方なくメールを開いた。

 息をのんだ。
「どうしたん、愛ちゃん」
 そんな言葉も勝手に私の口から出てくる。
 これはきちんと読まなければ。
 私は立ちあがり、ベッドを離れてカフェテーブルに座り直した。
 メールの件名にこう書かれていたのだ。
『重要事項です。必ず最後まで読んでください。お願いします』と。