「ただいまー」
ハルの声が聞こえて、弘とオオカミ達は揃って声がした方に向かった。
「おかえり、結構かかったんだな?」
弘がハルに声を掛ける。その足にはもう包帯は巻かれていなかった。
最後にハルがここを出てから、ゆうにふた月を超えていた。
「うん、ちょっとね。色々やってたら遅くなっちゃった。良かった、足治ったんだね」
「応、オオカミもみんな元気だよ」
「そいつは良かった」
ハルにオオカミ達がまとわりつくのを見ながら、弘はふと気がついた。
「ハル、お前、手にそんな傷あったか?」
ハルの右手には、爪で引っ掻かれたような奇妙な痕がついていた。
《ハル》
白い頭を擦り付けるようにしながらハルの匂いを嗅いでいた(さく)も不思議そうに桃色の瞳をハルに向けた。
《狼鬼とずっと一緒にいた?》
「ずっとではないにしろ一緒にいたけど。なんで?」
《ハルから狼鬼の匂いがする》
ハルの顔が引き攣ったのが分かった。
《...ハル》
狼鬼が諦めたようにハルに声を掛ける。
はぁ、と大きく息を吐いて、まっすぐに弘の目を見た。
「来て。ちゃんと話すから」
狼鬼が何故か、申し訳なさそうに目を伏せた。