【660PV突破しました!ありがとうございます!】たたかい 番外編 〜天秤〜《たたかい 続編・其の壱》


「弘、大丈夫?」
ハルがぐったりと座り込んでいる弘に訊いた。
「生きてはいる」
弘がぼそぼそと呟く。
《それはよかった》
煌がゆらゆらと尻尾を振った。
「よっし、終わったならとっとと戻ろう」
ハルが刀を背中の袋に戻しながら言う。
2人は雷、そして煌の背中にそれぞれ跨り、小走りで待機所へと戻っていった。

ひろー、と大きな声を上げながら、ハルが縁側に姿を見せた。
「怪我大丈夫?」
「大丈夫に見えるか?」
「...見えない」
ハルは少し申し訳なさそうに呟いた。
弘の頭と左足には包帯が巻かれ、松葉杖を持っている。
「足折れてたんだね」
「そうそう、俺も気づかなかったんだけどさ、なんか痛いなぁと思ったら折れてた」
「...気づかなかった弘が怖い」
「そんなこと言ってくれるなよ」
2人が話していると、狼鬼が音もなく木から降りてきて言った。
《ハル、話ついた?》
あ、とハルが声を上げた。
「忘れてた」
《おい》
「...なんの話?」
「先生のところに行ってくるから暫く留守番よろしくって話」
「え⁉︎なんで?」
弘が大声をあげた。
「ちょっと先生に相談したいことがあってね」
「手紙じゃ駄目なのか?」
「会ってお話したいから」
「...そう」
「てことで行ってきます」
「今から⁉︎」
「うん。駄目?」
「駄目じゃないけど急だなぁと思って。ま、行ってらっしゃい」
「ん、ありがと。じゃあ、行こうか狼鬼」
《応》
あ、とハルが呟いてくるりと弘の方を振り返った。
「オオカミ達の世話よろしくー」
「え、何すれば良い?」
「餌やって撫でて遊ぶ」
「了解」
「よろしくねー」
ハルと狼鬼が元気よく歩いていく。
風花が舞いだした初冬の待機所で、弘は一つ身震いして息を吐いた。